「賃料が安く利回りが悪いので新たに賃貸募集をしたい」、「空室にした方が高く売れる」など、所有している物件の資産価値を高めるため、現在契約中の入居者の追い出しを希望するマンションオーナーは少なくありません。
実際、オーナーチェンジ物件の取引で追い出しについて多くの相談があります。
今回はオーナーチェンジの追い出しについて解説しています。オーナチェンジの追い出しを検討する場合、重視する点は経済合理性です。
知っておきたい賃貸借契約の基本知識・具体的な追い出す方法など、立ち退き料の相場やメリット・デメリットも押さえておきましょう。
オーナーチェンジ物件の追い出しは経済合理性で考える
オーナーチェンジ物件の追い出しには入居者との交渉や立ち退き料など、大きな労力と費用が必要です。追い出し交渉に投資した時間とお金に対して、それ以上の利益が見込めるケースでなければ意味がありません。もし、それでも追い出しをしたい場合は事前に計画を立てください。
例)空室にすると500万円高く売れると言われ、120万円かけて追い出し交渉をおこなった場合
交渉の末、120万円かけて追い出しが実現。新しい入居者の月額賃料が1万円上昇しました。これは約10年運用しないと回収できない金額なので、このままではメリットは少ないといえるでしょう。ただし、売却が前提であれば家賃が1万円高くなると売買価格で240万円高くなる可能性(利回り5%で取引)があり、意味があるかもしれません。
利回りから売却価格を求める計算式(年間家賃収入÷利回り)
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賃貸借契約の基本知識
賃貸借契約には普通賃貸借契約と定期賃貸借契約の2種類があります。オーナーチェンジ物件の追い出しには、2つの契約内容の違いを理解することが重要です。
普通賃貸借契約
普通賃貸借契約は借地借家法で守られており、借主の意思で契約満了後も契約更新ができます。貸主が退室を希望しても正当事由がなければ退去させられません。
賃貸契約において入居者側が保護されており、もし、「マンションを売りに出したい」などのマンションオーナーの正当事由に当たらない個人的な事情の場合、追い出しには入居者に立ち退き料を支払う必要があります。
サブリース契約を結んだ場合も同様です。
定期賃貸借契約
定期賃貸借契約には更新の取り決めがなく、契約期間終了後は貸主に物件が返ってくる契約になります。
もし、借主が契約更新を希望した場合でも、オーナーの合意がなければ再契約できません。定期賃貸借契約では、契約終了後は追い出しのための正当事由は不要で、貸主に立ち退き料を支払う必要もありません。
立ち退き交渉が難しい理由
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オーナーチェンジ物件の入居者を追い出す方法
追い出しを希望しても、すぐに追い出しはできません。事前に入居者と話し合いを重ね、段階を踏んだ上でようやく実現します。
賃貸契約更新に合わせて交渉する
2年で更新になっている契約が一般的です。更新の1年〜6カ月前から話し合いをおこないましょう。退去させる権利は貸主側にありません。しかし、住んでいる物件に特にこだわりがなければ多くの借主は応じてくれます。
退室の合意と引き換えに、更新料、退去時の原状回復費用を免除することが一般的です。
定期賃貸借契約に切り替える
更新時に次回の契約から普通賃貸借契約を定期賃貸借に切り替える方法もあります。次の契約終了まで入居者に猶予があるので、心理的ハードルも下げられるでしょう。
しかし、定期賃貸借契約が適用できる物件は、平成12年3月1日以降の契約に限りますので注意が必要です。
解除事由の確認
借主に賃貸契約の解除事由に該当するような問題があれば、正当事由なしでも追い出し可能です。例えば、賃貸滞納、転借、ペット飼育、騒音などのトラブル、反社会的勢力などが解除事由に当たります。
立ち退き料を払う
まずは賃貸管理を依頼している会社に交渉を依頼します。条件をこちらから提示して、お互いが納得する金額の着地点を見つけましょう。どこまで払えるかは、退去による資産価値の上昇によって変わってきます。交渉が難航するときは、弁護士に相談することをお勧めします。
必ず立ち退きをしなければならない、ということはない
オーナーチェンジの立ち退き料の相場について
立ち退き料の相場について法的な取り決めはなく、対象となる物件や借主の経済的な状況などで変わってきます。一般的には、現在の家賃の6〜12ヶ月分で、その中でも6ヶ月分を支払うケースが多く見受けられます。立退料の支払うことで正当事由になります。
原状回復費用の免除や、引っ越しや次の住居の敷金・礼金費用などを考慮して、相互が折り合う金額を話し合いましょう。
オーナーチェンジで追い出しのメリット
追い出しのメリットは、空室による所有物件の価値向上や家賃の適正化、住民トラブルの防止などがあります。
資産価値が上がる
実需のファミリータイプマンションなどは、空室の方が高く取引されることも。家賃と広さが正比例しないので、投資効率が悪い物件になりがちです。そのような物件は利回りが低いため、オーナーチェンジでは特に不利になります。
利回りが改善する
相場よりも安い賃料がついていると利回りが悪くなります。
追い出しにより、相場に合った家賃条件で新しい入居者を募集できるので、利回りの改善が期待できます。
入居者トラブル解消
入居者トラブルはマンションオーナーを悩ます大きな問題です。滞納や問題のある入居者が退出することで、ストレスから解放されるでしょう。そもそも問題がある入居者がいると、買い手は嫌がり売買すらできません。
マンションの売却
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オーナーチェンジで追い出しのデメリット
追い出しのデメリットは、追い出しにかかるお金と手間、それにともなう精神的ストレスになります。
費用がかかる
追い出しにはそれなりの費用が必要です。立ち退き料からはじまり、交渉が難航した場合には弁護士の相談費用、裁判費用なども追加されます。もし、裁判まで行くと裁判費用で100万円以上よけいにかかることもあります。
時間がかかる
普通賃貸借契約の場合、借主の意向が尊重されるため、追い出し交渉が数か月から1年と長引くことがあります。定期賃貸借契約のケースでも、契約期間満了まで待たなければいけません。
精神的なストレス
住という生活に欠かせない事柄で相手がいる交渉なので、感情的になってしまう場合も。長期間の話し合いを続けたが、交渉が破断に終わってしまい今までの苦労が泡と消えてしまう可能性もあります。
追い出しにはメリットもデメリットもあり、どちらを選択するべきとは一概にいえません。しっかり、メリット、デメリットを把握した上で、天秤にかけ経済的合理性で判断しましょう。
もし、追い出しの判断に迷った場合は、専門的知識の豊富な専門家に相談してください。
オーナーチェンジ物件の売却は入居者付き、空室どちらがおすすめ?
代表取締役伊藤幸弘
立ち退きを依頼する不動産会社を見極めるポイントは、オーナーチェンジ案件をたくさん取り扱ってる会社を選ぶことがポイントですね。しかし、矛盾するようですが、よほどの事情がない限り、そもそも立ち退きをおすすめしない会社を選ぶことが重要なんです。
なぜかっていうと、立ち退きって、すごく手間がかかるし、成功確率も低いんですよ。だから、経済的な合理性をちゃんと説明してくれる会社がいいんです。例えば、「立ち退きに100万かかるけど、それで物件の価値が500万上がります」みたいな説明ができる会社なら、立ち退き交渉を検討する価値はあるかもしれません。
当社をはじめとしたきちんとした会社なら、安請け合いはしないんです。立ち退きの手間を考えると、「オーナーチェンジのまま売った方がいいんじゃないですか」と提案するのが普通なんですよ。
だから、見極めるポイントは、単に「立ち退きできます」という会社じゃなくて、メリット・デメリットをきちんと説明してくれる会社。そして、必要なら「このままの方がいいですよ」と言ってくれる会社。そういう会社を選ぶのが大切です。