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事故物件は家賃を値下げする必要がある?値下げの相場や告知義務についても解説
所有している物件で、自殺や他殺といった死亡事故、事件が発生した場合、その物件は「事故物件」となり、借り手に敬遠されてしまいます。入居付けを行うためには、家賃の値下げを検討せざるを得ません。
この記事では、事故物件における家賃値下げの必要性や値下げの相場、売却について詳しく紹介します。
目次
事故物件の家賃相場は?値下げは必要?
事故物件において入居付けを行うためには、どの程度家賃を下げればよいのでしょうか。また、時間が経てば、家賃を元の額に戻すことはできるのでしょうか。
値下げをしなければ入居付けができないこともある
事故物件だからといって、必ず家賃を下げなければならないという義務はありません。しかし、値下げをしなければ入居者が現れないおそれはあります。
自殺や他殺などの死亡事故が発生した事故物件は、瑕疵物件と見なされます。瑕疵物件とは、購買(賃貸)の意欲を下げてしまう要因を持つ物件を指します。瑕疵の要因には心理的なものや建物の損傷などがありますが、死亡事故は「心理的瑕疵」に当たります。
たとえ物件自体に問題がなくても、自殺や他殺があった物件に住むのは誰しも抵抗があります。その点からすると、事故物件は不具合のある物件と同じく、価値が低いと見なされてしまいます。
価値が低い物件であれば、それに見合うように家賃も下げなければ入居付けは難しくなります。そのため、事故物件においては所有者が自主的に家賃を下げるケースがほとんどです。
事故物件の家賃相場はどれくらい?
事故物件の家賃をどれくらい下げるかは所有者の自由ですが、約1〜5割の値下げを行うのが一般的です。また、同じ事故物件でもその内容により、値下げの割合は異なる傾向にあります。死亡事故の内容と家賃の値下げ率の目安は以下のとおりです。
死亡事故の内容 | 家賃の値下げ率(目安) |
---|---|
自然死・病死 | 0~10% |
不慮の事故死 | 20~50% |
自殺 | 30~50% |
他殺 | 70~80% |
上記の値下げ率はあくまで目安です。実際の値下げ率は物件自体のニーズや事故発生からの経過年数、事故が発生した場所(物件内か共用部分かなど)によって大きく異なります。
時間が経てば相場近くに戻してもいい?
後述する事故物件のガイドラインでは、事故物件の告知義務が生じる期間は事故発生時から概ね3年とされています。
その期間を経過すれば告知は不要になることから、実質通常の物件と同じと見なされると考えてよいでしょう。そのため事故発生時から3年を経過したら、相場近くに戻しても問題はないといえます。
とはいえ、入居者がすでに入っている状態から家賃を上げるのは困難です。事故物件の家賃を相場近くに戻すタイミングとしては、「事故発生時から3年以上経過し、新しく入居者を募集するタイミング」といえるでしょう。
事故物件における告知のルール
かつて事故物件の定義や調査、告知に関するルールは明確に定まっていませんでした。そのため、不動産会社ごとに告知をするか、またどのように告知をするかといった判断が異なっていました。
この問題を解決するために、国土交通省により「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定されました。これは事故物件の取引(売買契約、賃借契約)を行う際、事故物件であることを買い手もしくは借り手に告知する義務をルール化したものです。ガイドラインに記された事故物件の定義や告知期間について、詳しく紹介します。
ガイドラインにおける事故物件の定義
ガイドラインにおいて告知義務が生じる死亡事故としては、殺人、自殺、事故が挙げられます。また、アパートのような集合住宅では、玄関やエレベーター、部屋の前の廊下など、日常使用する共用部分においても告知義務が生じます。隣家や物件の前の道路などで発生した死亡事故に関しては、告知義務はありません。
また、同じ死亡事案であっても、自然死や日常生活で生じうる不慮の事故(誤嚥や転倒など)は告知不要とされています。しかし、特殊清掃が必要なほどの汚損があった場合は、自然死であっても告知をする必要があります。
告知義務が生じる期間
告知義務が生じる期間は、賃貸の場合事故発生時もしくは発生が判明した時点から、概ね3年とされています。たとえば、孤独死で発見が遅れ、特殊清掃が必要になったというケースでは、死亡日ではなく発見した日から起算されます。
また、売買では告知義務の期限はありません。その理由としては、トラブル発生時の損害額が賃貸契約よりはるかに高いことが挙げられます。
期間が過ぎても告知義務が生じるケース
先述したとおり、賃貸契約においては、事故発生から概ね3年を経過した場合告知義務はなくなります。しかし、期間が過ぎても以下のようなケースでは告知義務が生じます。
- 借主から事案の有無について問われた場合
- 社会的影響が大きく、借主が把握しておくべき特段の事情があると認識した場合
1.はともかく、2.は主観的な判断になるため、所有者と借主の認識に齟齬が生じる場合があります。迷った場合でも、後にトラブルとならぬよう情報開示することをおすすめします。
事故物件は早めの売却判断を!
所有している物件が事故物件になった場合、一般的には以下の2つの選択肢のうち、どちらかを選ぶことになります。
- 家賃を下げて運用を続け、3年が経過した後で家賃相場を元に戻す
- すぐに売却する
しかし、事故物件を所有し続けるにせよ、売却するにせよ、通常の物件とは異なる問題が生じます。事故物件は売るべきか、また売るのであればどのように売るべきなのかを紹介します。
事故物件を所有しているとどうなる?
所有している物件で死亡事故が発生すると、当初の予定が大きく狂い、赤字になる場合があります。その理由としては以下の3点が挙げられます。
- 予定していた収入が得られない
- AD費用がかさむ
- リフォームやハウスクリーニングの費用がかさむ
予定していた収入が得られない
先述したとおり、事故物件は心理的瑕疵の度合いにより、家賃を下げなければ入居者が付かない場合があります。そのため、空室になる、もしくは家賃が低下するといった事態となり、予定していた収入が得られないおそれがあります。
広告料がかさむ
入居付けが難しい場合は、賃貸募集をする際に「広告料」をつけます。広告料は成約となった際に仲介会社に支払います。広告料を付けて募集することで、仲介会社は部屋の紹介に注力してくれます。しかし、広告料をかけても入居者が付くとは限らないため、キャッシュフローがより悪化してしまう場合もあります。
リフォームやハウスクリーニングの費用がかさむ
事故物件のイメージ改善のためにリフォームやハウスクリーニングを行う場合、余分な費用がかさみます。また、広告料と同じく費用をかけたからといって入居者が付くとは限りません。最悪のケースでは費用ばかりがかさみ、結局空室が続いてしまうということもありえます。
売却時に買い手がつきづらいことも
先述の通り、売買契約時の事故物件に関する情報開示には期限が定められていません。
そのため事故から時間が経っても事故物件であるという情報を開示しなくてはならず、買い手がつきづらくなることが予想されます。
売却の相談は実績豊富な不動産会社へ
「事故物件を早く処分したい、でも買い手がつかない」という場合は収益物件に強い不動産会社に相談してみましょう。買い取りも行っている不動産会社であれば、買い手が付かない場合直接買い取ってくれることもあります。
事故物件は所有していても収益を生むどころか赤字を増やしてしまうおそれがあります。手残りがあるうちに物件を売却できれば、売却益を元手に新たに不動産投資を始めることも可能です。
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