ワンルーム投資コラム

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ワンルームマンション条例とは?規制がもたらす不動産市場への影響も解説

ワンルームマンション規制

都心部を中心に単身者向けの賃貸需要が高まる一方で、ワンルームマンションに関する規制が全国的に広がっています。

特に東京23区では、条例や指導要綱により、すべての地方公共団体(自治体)が一住戸あたりの最低面積を定めています。また埼玉県川口市は、ワンルームマンションに宅配ボックスの設置を義務づけるなど、独自の規制を含む条例改正案を可決しました。

規制によって新築ワンルームマンションの建築が難しくなる一方で、単身者世帯の数は増加しているため、需要が高まることが予想されます。その結果、ワンルームマンションの空室率は低下することが期待されます。

ワンルームマンション条例の主な規制内容や、不動産市場にもたらす影響について解説します。
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ワンルームマンション条例とは?

ワンルームマンション条例とは、一定規模以上の単身者向け集合住宅を対象として、建築基準やルールを設ける条例です。地方公共団体によっては、遵守の義務がある条例ではなく、強制力がない指導要綱を定めるケースもあります。

ワンルームマンション条例の規制内容は、地方公共団体によってさまざまです。東京都豊島区のように、1住戸の専用面積が30m²未満の集合住宅を建築する方に対し、狭小住戸集合住宅税(ワンルームマンション税)を課税する例も見られます 。

このような課税措置により、狭小住戸の建設を抑制し、より広い居住空間の確保を促すことで、良質な住環境の形成を目指しています。

ワンルームマンションの規制が全国的に広がる背景

ワンルームマンションの規制が全国で拡大している理由は、単身者向けの狭小住宅(住戸の専用面積が一定規模以下の住まい)が乱立し、地域のコミュニティ形成に悪影響を及ぼしているからです。

賃貸物件は狭い住戸をたくさん作るほど、1m²あたりの家賃収入が増加し、収益性が高まります。そのため、豊島区では専用面積が30m²未満の狭小住宅が全住戸の36%に達するなど、都心部を中心としてワンルームマンションの建設ラッシュが続いています。

しかし、ワンルームマンションのような狭小住宅は住環境にゆとりがなく、高齢者やファミリー世帯の生活には適していません。単身者向けの住まいが増加すると、地域の構成員の多様性が失われてしまう可能性があります。

また、地方公共団体にとって、住民税の観点からも課題があります。たとえば、学生など一時的な居住者は住民票を移さないことが多く、住民税収入が見込めません。一方、ファミリー世帯は定住傾向が強く、安定した税収が期待できます。子育てや教育、福祉、町会(自治会)などの地域活動を将来にわたって維持するには、さまざまな世帯が暮らしやすいまちづくりと、その財源となる安定した税収基盤が必要です。

そのため、多くの地方公共団体がワンルームマンション条例や指導要綱を制定し、最低住戸面積に満たない集合住宅の建設を規制しています。

ワンルームマンション条例を制定する地方公共団体(自治体)が増えつつある

ワンルームマンションに対する規制は、東京23区のほか、さまざまな地域で行われています。以下は、ワンルームマンション関連の条例または指導要綱がある地方公共団体の例です。

地方公共団体条例・指導要綱
東京都千代田区千代田区ワンルームマンション等建築物に関する指導要綱
江東区マンション等の建設に関する条例
港区港区単身者向け共同住宅の建築及び管理に関する条例
新宿区新宿区ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例
渋谷区渋谷区ワンルームマンション等建築物の建築に係る住環境の整備に関する条例
千葉県千葉市ワンルームマンション建築指導要綱
埼玉県さいたま市ワンルーム形式集合住宅の建築に関する指導基準
川口市川口市ワンルームマンション等の建築及び管理に関する条例
大阪府大阪市ワンルーム形式集合建築物指導要綱
兵庫県神戸市神戸市民の住環境等をまもりそだてる条例
西宮市ワンルームマンション等の管理等に関する指導要綱

今後もゆとりある住環境の形成のため、ワンルームマンションに対する規制は全国的に広がっていくでしょう。

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ワンルームマンション条例の主な規制内容

ワンルームマンション条例の主な規制内容は以下のとおりです。

  • 一住戸あたりの専有面積の確保
  • 駐輪場やバイク置き場の設置
  • 管理人の配置または管理人室の設置
  • ファミリー住戸の設置
  • 高齢者に配慮した住戸の設置

それぞれの規制について解説します。

一住戸あたりの専有面積の確保

狭小住宅の建設を抑制するため、多くの地方公共団体がワンルームマンションの最低住戸面積を定めています。

たとえば、東京23区の場合、1住戸あたりの専有面積を25m²以上としている地方公共団体(自治体)がほとんどです。さらに、渋谷区のように最低住戸面積が28m²以上と厳しい基準を設ける地方公共団体も見られます。

一方、東京23区以外の地域では、最低住戸面積の規制が比較的ゆるやかな傾向にあります。たとえば、大阪府大阪市の場合、一住戸あたりの最低住戸面積は18m²以上です。さらに条例ではなく指導要綱のため、法的な強制力もありません。

駐輪場やバイク置き場の設置

地方公共団体によっては、ワンルームマンションの敷地内に駐輪場やバイク置き場の設置を義務づけている場合があります。これは、単身者の多くが通勤や買い物に自転車を利用する傾向にあり、適切な駐輪スペースが確保されていないと、歩道や公共スペースへの放置自転車が増加し、街の景観や歩行者の安全な通行を妨げる原因となるためです。

たとえば、新宿区でワンルームマンションを建設する場合、総住戸数の1/20以上のバイク置き場や、総住戸数からバイク置き場の必要台数を減じた数以上の駐輪場の設置が必要※です(※)。

※参考:新宿区「新宿区ワンルーム条例の手引き

管理人の配置または管理人室の設置

ワンルームマンション条例の中には、管理人の配置または管理人室の設置を義務づけるものもあります。 単身者向け物件では入居者の入れ替わりが頻繁で、ゴミ出しルールの徹底や共用部分の管理が難しいという特徴があるためです。また、防犯面での安全確保や、不在時の宅配物の受け取り対応など、入居者の生活サポートの観点からも管理人の存在は重要となっています。

たとえば、江東区の「マンション等の建設に関する条例」では、総住戸数に応じて以下のような基準を設けています。

総住戸数管理体制
30戸未満管理人を週1日以上一定の時間帯に駐在させること
30戸以上50戸未満管理人を1日4時間以上、かつ週5日以上駐在させること
50戸以上管理人を1日8時間以上、かつ週5日以上駐在させること

ファミリー住戸の設置

子育て世帯が住みやすい環境づくりのため、ファミリー住戸に関する規制を設ける地方公共団体も多く見られます。たとえば新宿区の場合、住戸数が30戸以上のワンルームマンションを対象とし、専有面積が40m²以上のファミリー住戸を設けることを義務づけています。

高齢者に配慮した住戸の設置

同様にして、高齢者に配慮した住戸の設置を義務づける地方公共団体(自治体)もあります。

新宿区を例に挙げると、住戸数が30戸以上のワンルームマンションの場合、全住戸の2割以上を高齢者が住みやすい住戸にしなければなりません。たとえば、以下のような配慮が求められます。

  • 管理人室への通報設備を設ける
  • 玄関、便所、浴室、廊下などの壁面に手すりを設置するか、当該壁面を自由に手すりが設置できる構造とする
  • 室内(玄関の上がり框や階段などを除く)の床面は段差のない構造とする
  • 玄関の出入口の幅と廊下の有効幅は、80cm以上とする

参考:新宿区「新宿区ワンルーム条例の手引き

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ワンルームマンション条例がもたらす不動産市場への影響

ワンルームマンションの規制が全国的に広がり、すでに不動産市場にも影響が見られます。東京23区のマンション着工戸数は令和5年12月に1,986戸となり、前年同期比で22.1%減少するなど、近月は低調な傾向が続いています。

着工戸数の減少には様々な理由がありますが、そのうちのひとつにワンルームマンションの規制が影響していると考えられます。

特にワンルームマンションの規制が厳しい

一方、単身世帯が増加傾向にあるため、ワンルームマンションの賃貸需要は低下していません。東京都を例に挙げると、単身世帯が占める割合は2020年に50%を超えており、2035年までにピークを迎える見込みです。

今後も未婚化・晩婚化の進行や、高齢の単身者の増加、外国人人口の流入などにより、ワンルームマンションの需要増加が想定されます。そのため、ワンルームマンションの規制がまだ行われていない地域を中心として、新設住宅着工戸数が増えるでしょう。

たとえば、ワンルームマンション関連の条例がない地方公共団体や、大阪市のように住戸専用面積の規制が比較的ゆるやかな地方公共団体(自治体)では、ワンルームマンション投資のライバルが増える可能性があります。ワンルームマンションが大量に供給されるにつれて、物件価格や家賃の下落が生じる可能性があります。

このようにワンルームマンション投資には、地方公共団体ごとの条例や指導要綱など、さまざまな要因が関わってきます。不安なことや分からないことがある場合は、信頼できる不動産会社に相談しましょう。

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コラム監修

コラム監修

伊藤 幸弘(いとう ゆきひろ)
株式会社TOCHU(トウチュウ)代表取締役
投資マンション専門家/不動産コンサルタント

プロフィール

2002年より投資用中古ワンルームマンション売買のキャリアをスタートし、現場での売主・買主双方のリアルな課題解決を通じて、個人投資家の資産形成支援に従事。
2014年に株式会社東・仲(現:株式会社TOCHU)を立ち上げ、通算の取扱実績は20,000件以上。
2025年からは業界初の価格透明化サービス「TOCHU iBuyer」を展開し、中古投資マンション市場の健全化を推進。
「誠実な取引こそが市場の信頼をつくる」という理念のもと、投資マンションの適正な価値形成を目指して活動している。

保有資格

・公認 不動産コンサルティングマスター
・宅地建物取引士
・ファイナンシャル・プランニング技能士
・賃貸不動産経営管理士
・投資不動産取引士
・競売不動産取扱主任者
・日本不動産仲裁機構 認定ADR調停人

著書・実績

『投資ワンルームマンションをはじめて売却する方に必ず読んでほしい成功法則』(クロスメディア・パブリッシング)

『マンション投資IQアップの法則 〜なんとなく投資用マンションを所有している君へ〜』(CHICORA BOOKS)

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