不動産投資
アパート売却の方法・流れ|売却理由やアパートならではの注意点も紹介

不動産を何棟も所有している「メガ大家」などでない限り、ほとんどの方はアパート売却の経験がありません。
アパート売却が初めてで、何から始めていいのか分からない方向けにアパート売却のいろはを紹介します。ここで紹介する内容を理解し、失敗のない売却活動にしましょう。

目次
アパート売却の理由やタイミング
アパートの売却タイミングはさまざまな観点からの判断が必要です。今が本当に売りどきかどうか、迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。
まずは、アパート売却のタイミングを探る一助として、売却の理由や利益を出せる年数、状況について解説します。
アパートを売却する理由
アパート経営を行っているオーナーがアパートを売却する理由を3つ紹介します。
キャッシュフローが悪化したため
不動産は経年劣化します。その結果入居者の確保が難しくなり、空室が増えたり、家賃を下げざるを得なくなったりするため、収益が下がります。また、年々高くなる修繕費がキャッシュフローの悪化を加速させてしまうでしょう。
そのまま経営を続けていると、最悪の場合債務不履行に陥ってしまうこともあります。そうなる前に、アパートを売却するオーナーも少なくありません。
まとまった資金が必要になったため
アパート経営がうまくいっていても、まとまった資金が必要になったときは売却を検討します。
アパート経営は長期的に安定した利益が得られますが、一攫千金は狙えません。起業や結婚、子どもの教育費用など、まとまったお金が必要になった場合には、アパートを売却して資金を確保するというケースもあります。
ライフスタイルが変化したため
ライフスタイルの変化も売却の理由になり得ます。
アパートの管理は管理会社に任せられるとはいえ、月々の収支計算や管理会社とのやり取り、確定申告などは自分で行わなくてはなりません。病気や引っ越し、転職、高齢などの理由でアパート経営にかける時間や体力がなくなった場合もアパート売却に踏み切るタイミングの一つです。
アパートは何年で売るべき?
アパートの築年数や、所有年数により物件価格や必要経費が変わるため、それらも加味して最良のタイミングをつかみましょう。特に重要なポイントを3つ紹介します。
築20年未満
アパートは築年数が経過するごとに価値が下がります。特に築20年を過ぎると築10年未満の物件の半額程度になってしまうため、できるだけ高く売却したいという場合は、20年未満で売却を検討しましょう。
所有期間5年超
築浅物件は高く売れますが、だからといって所有してすぐに売ってしまうと税金面で不利になります。土地や建物を売却した際に得られる「譲渡所得」は短期(5年以下)と長期(5年超)があり、税率が大きく異なるためです。
| 所得税 | 住民税 | 計 | |
|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得
(所有期間5年以下)※1 |
30.63% | 9% | 39.63% |
| 長期譲渡所得
(所有期間5年超)※1 |
15.315% | 5% | 20.315% |
※1 売却した年の1月1日より換算
アパート一棟となると売却益が高額になるケースも多く、所有期間によって数百万円単位で手残り額が変わることになるため注意が必要です。
デッドクロス到来時
デッドクロスとは、ローン元金返済が減価償却を上回った状態を指します。
不動産は年々減少していく価値(減価償却)を経費に計上できます。実際には損失は出ていないのに所得を減らすことができ、納税額を圧縮できるというメリットがあります。しかし、減価償却には期間があるため期間が過ぎると計上ができません。
一方、ローン元金は返済が進むと返済額に占める割合が増えていきます。利子は経費に計上できますが、元金は計上できません。そのため、ローン元金返済額が減価償却費を上回ると、帳簿上の黒字が大きくなり、納税額が上がって資金繰りが悪化します。これを「デッドクロスの到来」といいます。
特に減価償却期間の短い中古や木造のアパートはデッドクロスになりやすいため、デッドクロスを織り込んだ長期計画を立てなくてはなりません。
高く売れる売却タイミング
アパートの築年数や所有期間の他に考慮すべき点としては、アパートの状態や経済情勢などが挙げられます。特に以下のような場合はアパートが高く売れることが多いため、売却を検討するのも一つの選択肢です。
アパートが満室である
満室状態のアパートは高く売却できます。満室のアパートは利回りが高いため、売却価格も高くなります。また、収益力のあるアパートと見なされるため融資審査においても有利で、購入希望者が現れたものの、融資審査に通らず契約が白紙に戻されるリスクも低いといえます。
金利が低い
金利が低いときもアパート売却の好機です。金利が低いとそれだけ借入可能額が増えるため、高い価格に設定しても購入希望者が現れる可能性が高まるためです。
物件価格の上昇が見られる
物件価格の上昇が見られるときも売却のタイミングのひとつです。不動産投資を始めようとする人が増えるため需要が上がり、その分アパートが高く売れる可能性が高まります。
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アパート売却の方法・流れ
アパート売却を行う場合は、不動産会社に仲介を依頼することがほとんどです。不動産会社にアパート売却の仲介を依頼する場合の売却方法と流れについて解説します。
アパート売却の流れ
不動産会社に仲介を依頼する場合のアパート売却の流れを紹介します。
1.価格査定を依頼する
まずは価格査定を依頼します。価格査定とは、アパートがいくらで売れるのか、その売却予想金額を算出することです。
価格査定には売却予定のアパートや周辺エリアの情報から大まかな額を算出する「簡易査定(机上査定)」と、現地に行って実際にアパートを見ながら価格を割り出す「訪問査定(現地査定)」があります。
2.媒介契約を結ぶ
次に不動産仲介会社を選び、媒介契約を結びます。媒介契約は一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類から選択可能です。
それぞれに特徴があり、どの契約が最良とは一概にいえません。3つの媒介契約を理解したうえで自分に合ったものを選びましょう。
3.売却活動を行う
媒介契約を結んだら、いよいよ売却活動に移ります。基本的には不動産仲介会社に任せられますが、買い手が現れない場合は売却額の値下げやリフォームを提案される場合があります。
値下げやリフォームには当然メリットとデメリットがあります。不動産会社に相談しながら納得したうえで決断しましょう。
4.売却契約を結ぶ
買い手が見つかり、買い手の融資審査(※)が完了したら、売買契約を締結します。
契約書は仲介を行った不動産会社が作成しますが、内容に不備や誤りがないかを確認し、不明点は必ず不動産会社に聞くようにしましょう。契約日には売り手、買い手、不動産仲介会社が集まり、売買契約を結びます。
※この時点での融資審査は事前審査(仮審査)。本審査は売買契約締結後に行う。
5.アパートを引き渡す
買い手の本審査が通ったら引き渡しを行います。残金の決済及び登記手続き、税金の清算を行ったあと、関係書類と鍵を渡して完了です。
アパート売却にかかる期間
アパート売却には半年程度かかると思っておきましょう。ただし、物件の状態や立地が悪い、買い手のつきづらいアパートは売却活動に時間がかかり、1年以上を要することもあります。
このように、不動産は流動性(現金化のしやすさ)が低い資産です。売却を希望する場合は、できるだけ早く動かないと、好機を逃すおそれがあります。
アパート売却で所有者がすべきこと
アパート売却に必要な売却活動や契約などの諸手続きは不動産仲介会社に任せられます。所有者がすべき最も重要なことは、優秀な不動産仲介会社を選ぶことです。
良い不動産仲介会社を選ぶためには複数の会社に査定依頼をして、その中から信頼できるところを選ぶことが重要です。不動産仲介会社の選定は、売却活動の成否を決めることになりますので、慎重に検討しましょう。
アパート売却ならでは注意点とは
基本的にアパート売却の流れは分譲マンションや一戸建てと同様ですが、やや難易度が高くなります。中古アパートは買い手がつきづらいうえ、入居者が複数いるため、通知や敷金の扱いが煩雑になるためです。
アパート売却時に、特に注意すべき点を紹介します。
中古アパートは買い手がつきづらい
中古アパートは戸建てや分譲マンションより買い手が見つけづらい傾向にあります。その理由としては、売却価格の高さが挙げられます。
たとえ中古でも、一棟となると売却価格は高く、不動産投資には区分マンションという選択肢があることからも一棟アパートの購入はハードルが高いです。
また、特に郊外にある中古アパートは回収リスクが高くなるため、融資審査が下りづらい傾向にあります。不動産売却では、もし購入希望者が見つかっても、融資審査が下りず、売買契約を撤回されるというケースもあります。
不動産投資ローンの融資審査では借り手の属性に加え、物件の収益性も判断材料になります。郊外にある中古アパートは収益性が低いと見なされるため、融資審査に通りづらいのです。
入居者がいる場合はどうする?
アパートに入居者がいる場合は、入居者及び買い手に対して、どのような対応が必要なのでしょうか。
入居者に対してすべきこと
アパートに入居者がいる場合は、物件の引き渡しが終わった時点でオーナーが変わった旨を連絡しましょう。
特に伝えなければならない事項として、家賃の支払い方法と支払い先の変更が挙げられます。お金に関わることなので、入居者に不信感をもたれないよう確実、丁寧に伝えましょう。連絡方法は書面と電話両方を使い、書面は旧オーナー、新オーナーの連名にすると入居者も安心します。
買い手に対してすべきこと
入居者がいる場合は、手元に入居者から預かった敷金があるはずです。敷金は退去時に家賃の滞納分や補修費用を差し引いて入居者に返還するお金です。そのため、オーナーが変わった場合は、新しいオーナーに引き継がなければなりません。
基本的には、新オーナーから旧オーナーにアパートの購入費用から敷金を差し引いた額を売買代金として支払い、それをもって敷金の引継ぎとします。
不動産会社に相談しよう
不動産投資を始めたら、相続をしない限りいずれは売却を考えなくてはなりません。特にアパートは買い手を見つけたり、手続きをしたりする際に大きな労力がかかります。
アパートをいつ、どのように売却すれば良いか分からない場合は、収益不動産に強い不動産会社に相談しましょう。売却のタイミングや適切な売却額、高く売れるコツについてアドバイスをもらえるはずです。
また、優秀な不動産会社に仲介を依頼すれば、査定から売却活動、契約の締結までを安心して任せられます。アパート経営は出口戦略が命です。少しでも高く、またスムーズに売却をするために、信頼できる不動産会社のサポートを受けましょう。
あなたのマンション・アパートの価格が分かる
コラム監修
伊藤 幸弘(いとう ゆきひろ)
株式会社TOCHU(トウチュウ)代表取締役
投資マンション専門家/不動産コンサルタント
プロフィール
2002年より投資用中古ワンルームマンション売買のキャリアをスタート。
20年以上にわたり投資マンション市場に携わり、売主・買主双方のリアルな課題解決を通じて、個人投資家の資産形成をサポートしてきた。
2014年に株式会社東・仲(現:株式会社TOCHU)を設立。
投資用中古ワンルームマンションを中心とした売買仲介・買取事業を展開し、これまでの取扱実績は20,000件以上。
現在、会社には年間7,000件以上の投資マンション売却・不動産投資に関する相談 が寄せられており、多くの投資家の売却戦略や資産運用をサポートしている。
2025年には業界初となる価格透明化サービス 「TOCHU iBuyer」 を展開。
中古投資マンション市場の価格不透明性を解消し、投資家が適正価格で売却できる仕組みづくりを推進している。
「誠実な取引こそが市場の信頼をつくる」という理念のもと、 投資マンション市場の健全な発展を目指して活動している。
専門分野
・投資マンション売却
・投資マンション買取
・オーナーチェンジ物件売却
・不動産投資コンサルティング
メディア掲載・業界実績
投資マンション売却・不動産投資の専門家として、各種メディアや業界媒体で紹介されている。
・NHKにて不動産市場に関する取材
・「住宅新報」にてTOCHU iBuyerが紹介
・「リフォーム産業新聞」にて企業取り組みが掲載
・不動産業界メディア「リビンマガジンBiz」にてサービス紹介
・不動産オーナー向け専門誌「月刊 地主と家主」に書籍が掲載
・ERA LIXIL不動産ショップ全国大会にて成績優秀により複数回受賞。
・不動産業界団体 投資不動産流通協会 の会員として研修・研究活動に参加。
・JAPAN BUILD 「不動産テックEXPO」 のセミナー登壇
不動産取引のデジタル化・透明化に向けた取り組みを発信している。
保有資格
・公認 不動産コンサルティングマスター
・宅地建物取引士
・ファイナンシャル・プランニング技能士
・賃貸不動産経営管理士
・投資不動産取引士
・競売不動産取扱主任者
・日本不動産仲裁機構 認定ADR調停人
著書・実績
『投資ワンルームマンションをはじめて売却する方に必ず読んでほしい成功法則』(クロスメディア・パブリッシング)
『マンション投資IQアップの法則 〜なんとなく投資用マンションを所有している君へ〜』(CHICORA BOOKS)


