
投資マンション基礎知識
不動産投資はリスクが多い?それでも始める人が多い理由とは
不動産投資というと「やめとけ」「割に合わない」などと、ネガティブなイメージを持っている人は少なくありません。
しかし、リスクが多いといわれながら、不動産投資を始める人はあとを絶ちません。不動産投資のリスクと、始める人が多い理由、実際に失敗したときの対処法について解説します。
不動産投資は単なる投資商品の購入ではありません。長期的な視点を持ち、慎重に計画を立て、継続的に管理していく必要があるビジネスであることを念頭に置きましょう。
目次
不動産投資におけるリスク
不動産投資にはさまざまなリスクがあり、知らずに始めると、想定外の損失を出してしまうことも考えられます。
不動産投資を始める前に抑えておくべきリスクを解説します。
空室・滞納リスク
不動産投資で最も大きなリスクのひとつは、空室や滞納により家賃収入が途切れることです。
不動産投資ではローンを家賃収入で返済しますが、家賃収入が途切れると、投資の収支がマイナスになることもあります。その場合、ローン返済に本業収入や貯蓄などを充てなければならず、生計を立てられなくなるかもしれません。
物件を購入したときには満室で運用できるイメージがあっても、何らかの原因で入居率が下がることはあります。入居率が下がる要因には、物件の老朽化や周辺環境の変化など様々です。
空室リスクのほかにも、家賃滞納が発生し家賃を回収できないリスクもあります。空室・滞納リスクを防ぐには、購入時に物件の需要を見極めることが重要です。
家賃下落リスク
不動産投資には、家賃が下落するリスクもあります。
一般に建物の老朽化とともに家賃は下落し、築10年で5~10%、築20年で10~20%ほど家賃が下がるといわれます。
不動産投資を始める前に、家賃の下落も計算に入れシミュレーションするとともに、物件の価値を保つ修繕計画も立てておきましょう。
災害リスク
不動産投資には、地震や洪水などの災害で、建物がダメージを負うリスクもあります。
大規模修繕を実施すると、莫大な費用が発生し、修繕中は入居者を募集できないため収入が途切れます。災害リスクへの対策としては、地震保険や火災保険への加入が有効です。
また購入前に行政のハザードマップで災害リスクを確認し、そのうえで耐震性の高い物件を選びましょう。
金利上昇リスク
不動産投資では、ローン支払い中に金利が上がり、支払い額が増えるリスクがあります。
ローン金利が上昇すると利益が減少し、赤字が膨らんでいく可能性があります。ローンは返済期間が長いため、金利の変動が収支へ及ぼす影響は無視できません。
金利上昇のリスク対策は、なるべく借入期間を短くすることと、固定金利を選ぶことです。
資金流動化リスク
不動産投資特有のリスクとして、売りたいときに売れないリスクがあります。
株式やFXと比べると、不動産は換金しづらい(流動性に欠ける)資産です。売れない主な理由は、物件の需要が減り、買い手が付きにくくなることです。
資金流動化リスクを避けるために、将来の需要も見据えた物件選びをしましょう。
不動産価格下落リスク
不動産投資には、投資物件の価格が下がるリスクがあります。
一般的に、家賃が下がると収益力が低下し、結果的に資産価値が下がります。物件価格下落の原因は、物件需要の低下で、築年数や周囲の競合物件に左右されます。ほかに景気動向からも影響を受けます。
不動産価格下落リスクへの対策は、将来の需要が減らない物件を選ぶことです。
修繕リスク
不動産投資には、建物の修繕が必要になるリスクがあります。
建物が老朽化すれば、物件の価格は下落します。価格を維持するためにはメンテナンスと修繕が必要になり、相応の費用がかかります。
修繕リスクへの対策は、あらかじめメンテナンス費用を収支計画に組み込んでおくことです。
税金リスク
不動産投資には、さまざまな税金がかかります。そのため税金を見落としていると、予想外の出費で収支が悪化するかもしれません。
不動産投資にかかる税金は、以下のとおりです。
税金 | 内容 |
---|---|
不動産取得時の課税 | 不動産取得税・印紙税・登録免許税・消費税 |
所有に対する課税 | 固定資産税・都市計画税 |
家賃収入に対する課税 | 所得税・住民税 |
想定外の出費で収支が悪化しないよう、不動産投資にかかる税金を把握しておきましょう。
火災リスク
火災は、不動産投資において最も深刻なリスクの一つです。一瞬にして投資物件を失うだけでなく、長期にわたって収入が途絶える可能性があります。
火災が発生した場合、まず物件自体が損失します。全焼や半焼により、投資資産の価値が大きく損なわれることは言うまでもありません。さらに、修復期間中は家賃収入が得られなくなるため、キャッシュフローに大きな影響を与えます。
また、火災の原因によっては、オーナーが賠償責任を負う可能性もあります。建物の管理不備が原因で火災が発生した場合、入居者や近隣住民に対して多額の賠償金を支払わなければならない事態も想定されます。
このリスクに対処するためには、適切な火災保険への加入が不可欠です。さらに、定期的な防火設備の点検や、入居者への防火意識の啓発活動も重要な対策となります。
その他のリスク
他にも、不動産投資には様々なリスクが存在します。法規制の変更リスクは、建築基準法や消防法などの改正により、既存の物件に追加の設備投資が必要になる可能性があります。これは予期せぬ支出を強いられる原因となり、投資計画に大きな影響を与えかねません。
近隣トラブルのリスクも無視できません。入居者と近隣住民とのトラブルが発生すると、物件の評判が落ち、結果として空室率が上がるリスクがあります。特に、騒音問題や駐車場の使用方法など、日常生活に直結する問題は深刻化しやすいため、早期の対応が求められます。
管理会社の倒産リスクも考慮する必要があります。不動産投資では多くの場合、物件の管理を専門の会社に委託しますが、その会社が倒産した場合、急遽新たな管理体制を構築しなければなりません。これは単に手間がかかるだけでなく、管理の質が低下することで物件の価値にも影響を与える可能性があります。
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リスクが多くても不動産投資を始める人が多い理由
不動産投資はリスクが多いにもかかわらず、近年始める人が増えています。なぜ不動産投資が注目されているのか、その理由を紹介します。
手間をかけずに不労所得になる
不動産投資は手間のかからない投資として、忙しい投資家たちから人気です。
不動産投資が株式やFXと異なるのは、管理を業者に委託できる点です。また、日々レートやチャートを確認する必要もなく、運用に時間を取られません。
そのため不動産投資は本業を持ちながら取り組みやすく、サラリーマンの副業として人気があります。
節税になる
不動産投資がほかの投資と異なる点として、節税になることが挙げられます。このことも、サラリーマンの間で不動産投資へ関心が集まる理由です。
不動産所得は給与所得と「損益通算」できます。つまり不動産投資で収支がマイナスの場合は、給与と合わせた課税所得が低くなるため、税金が安くなるのです。
所得税の税率は所得に応じて決まるため、高所得者ほど節税効果は高くなります。
相続税対策になる
不動産投資を相続税対策のために行うこともあります。特に2015年に相続税の基礎控除額が減額されてからは、節税を目的とした不動産投資が急増しました。
不動産を相続するときに、土地は路線価の80%程度、建物は50%程度の評価額となり、さらに賃貸物件の場合は、建物に対する控除も受けられます。
そのため、同額の資産を現金で相続するよりも、相続税額を安くできるのです。
生命保険の代わりになる
不動産投資は生命保険の代わりにもなります。
金融機関で不動産投資ローンを借りる際には「団体信用生命保険(団信)」に加入する必要があります。団体信用生命保険は、ローン返済中に本人が死亡・高度障害状態になった場合にローンの支払いが免除される制度です。
そのため、働き盛り世代の中には不動産投資を行い、団体信用生命保険を生命保険の代わりに利用する人も増えています。
不況に強い
不動産が不況に強い安定資産といわれることも、不動産投資の人気の理由のひとつです。
インフレ時は不動産の価値が上昇する傾向にあります。特に家賃は消費者物価指数とともに上昇する傾向にあり、インフレ対策として不動産投資に取り組む人も増えています。
さらに国の政策により金利が下がり、ローンを組みやすくなった現在は、不動産投資を始めやすいといえます。
老後の備えになる
不動産が価値の下がりにくい安定資産であることから、老後の私的年金として、不動産投資を始める人も多くなりました。
超高齢化社会で、特に若い世代を中心に「老後に備えを」という考えが広まっています。そこへ2019年の「老後2,000万円問題」と2020年のコロナショックとが重なり、資産形成ニーズに拍車がかかりました。
株式やFXと比べてリスクが低く、長期で運用できる不動産投資のほうが、老後資金の形成には向いているといえます。
不動産投資の失敗パターン
不動産投資において成功を収めるためには、過去の失敗例から学ぶことが非常に重要です。多くの投資家が陥りやすい失敗パターンとその対策について詳しく見ていきます。
キャッシュフローがマイナスの物件購入
不動産投資の最大の目的の一つは、安定した収入を得ることです。しかし、キャッシュフローがマイナスの物件を購入してしまうと、この目的を達成することができません。マイナスのキャッシュフローとは、毎月の家賃収入がローンの返済や諸経費を下回る状況を指します。この状態が続くと、長期的に資金が枯渇し、投資の継続が困難になります。さらに、予期せぬ修繕費や空室期間が発生した場合、財政的な困難に陥る可能性が高くなります。
キャッシュフローのマイナスを避けるためには、物件購入前に詳細なキャッシュフロー分析を行うことが不可欠です。家賃収入だけでなく、固定資産税、管理費、修繕費、ローン返済額などすべての支出を考慮に入れ、余裕を持った計画を立てる必要があります。また、将来的な家賃の下落や金利の上昇なども想定し、最悪のシナリオでもキャッシュフローがプラスになるような物件を選ぶことが重要です。
相場より高い価格での購入
不動産投資で失敗する典型的なパターンの一つが、市場価値以上の金額で物件を購入してしまうことです。将来的な売却時に損失が発生するリスクだけでなく、日々の賃貸経営においても採算が取れにくくなる原因です。
不動産業者の巧みな営業トークに乗せられてしまったり、物件の将来性を過大評価してしまったりすることで相場より高い価格で購入に至ってしまうケースがあります。また、不動産会社の担当者に急かされて、十分な調査をせずに決断してしまうケースもあります。
物件の相場感を掴むためにも、まず複数の不動産業者から評価を受けることが大切です。さらに、自身でも周辺相場を徹底的に調査し、物件の適正価格を把握することに努めましょう。不動産情報サイトで類似物件の価格を確認したり、国土交通省が公開している地価公示価格を参照したり、最寄りの路線価を確認したりすることで、より正確な価格判断ができるでしょう。
立地や需要を考慮しない物件選び
不動産投資において、「立地」は極めて重要です。しかし、多くの投資家が将来の人口動態や地域の発展計画を十分に考慮せずに物件を選んでしまい、後々問題に直面することがあります。
物件を選ぶ際には、地域の将来性、交通の利便性、生活インフラの充実度、競合物件の状況などを慎重に評価することが重要です。人口動態や経済成長の予測、都市計画などを調査し、長期的な視点で地域の発展性を判断しましょう。また、主要駅からの距離、バス路線の充実度、将来の交通インフラ整備計画なども確認が必要です。さらに、スーパーマーケット、病院、学校などの生活に必要な施設が近隣にあるかどうかもチェックポイントです。
適切な管理・メンテナンスの欠如
不動産投資において、物件を購入することはスタート地点に過ぎません。購入後の適切な管理とメンテナンスが、投資の成功を左右する重要な要素となります。この点を軽視してしまう投資家も少なくありません。
適切な管理・メンテナンスを怠ると、物件の価値低下、入居者の満足度低下、修繕費の増大といった問題が発生する可能性があります。定期的なメンテナンスを行わないと、建物の劣化が進み、物件の資産価値が急速に低下してしまいます。設備の不具合や建物の老朽化は、入居者の不満につながり、退去率の上昇や家賃の下落を招く可能性もあります。さらに、小さな問題を放置すると、後々大規模な修繕が必要になり、多額の費用がかかってしまうのです。
これらの問題を防ぐためには、定期的な点検と修繕計画の策定、質の高い管理会社との提携、入居者とのコミュニケーション、修繕積立金の確保などが効果的です。建物の状態を定期的にチェックし、必要な修繕を計画的に行うことで、長期的な物件の価値維持につながります。また、信頼できる管理会社を選び、日常的な管理業務を委託することで、プロフェッショナルな対応が可能になります。
入居者からの要望や苦情に迅速に対応し、満足度の向上に努めることも重要です。さらに、将来の大規模修繕に備えて、計画的に資金を積み立てることで、突発的な出費を避けることができます。
適切な管理とメンテナンスは、短期的には費用がかかりますが、長期的には物件の価値を維持し、安定した収益を確保するために不可欠な投資だといえます。
不動産投資に失敗した際の対処法
不動産投資には、リスクがあっても始めるだけの理由があるといえます。しかし万が一、不動産投資で失敗してしまった場合に解決ができるよう、対処法を紹介します。
ここでいう不動産投資の失敗とは、最終的に収支がマイナスになることです。マイナスが出始めたら、少しでも早く以下の方法で対処しましょう。
収支の改善を図る
不動産投資でもっとも多い失敗は、収支の悪化によるものです。
予想外の空室による家賃収入の減少や、修繕費などの出費で、ローン支払額が利益を上回ると、不動産投資の収支は悪化します。本業収入や生活費からローン支払いをするようになると、投資を続けることは困難になるでしょう。
収支悪化の対処法は、支出を減らし、収入を増やすことです。
支出を減らすには、管理方法を変更するのもひとつの方法です。管理方法には「サブリース契約」「管理委託」「自己管理」の選択肢があり、より経費のかからない方法を選択するとよいでしょう。
家賃収入を増やすためには、リフォームを行うなど、物件の価値を高める方法を取ります。失敗を最小限にするために、収支が悪化し始めたら、早い段階で改善することが重要です。
ローンの借り換えをする
支出を減らし、家賃収入を増やす努力をしても収支が改善されない場合には、金利の低いローンへの借り換えを検討しましょう。
返済に行き詰まったら、銀行に返済計画の見直しを相談しましょう。現在は低金利のため、低い金利での借り換えができる可能性があります。
不動産投資ローンは長期にわたる返済のため、支払総額を少しでも減らす方法を取ることが大切です。
物件を売却する
収支改善やローンの借り換えをしても改善が見込めない場合は、物件の売却を検討しましょう。
賃料収入でローン返済の見込みが立たなくなったら、投資を続けるほど赤字が膨らんでしまいます。そのため早急に不動産を売却し、ローン支払いをストップするべきです。
ただし、不動産売却の手続きは簡単ではありません。まず、ローンに設定された抵当権を外さないと物件を売却できません。通常は、ローンを完済することでやっと抵当権を解除できるのです。
もし残債が多く自己資金で完済できない場合には、銀行に「任意売却」の相談をし、抵当権を外してもらいます。ただし物件の査定額が低いと銀行の合意を得られないこともあり、注意が必要です。
そのため「不動産投資に失敗したかも」と感じたら、できるだけ早い段階で不動産の専門家に相談することをおすすめします。状況に応じた対処法と、必要な手続きを教えてもらえます。
不動産会社に相談する場合は、売却実績が豊富で信頼できる担当者のいる会社を選ぶのがポイントです。
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投資物件の売却を依頼する不動産会社の選び方
不動産投資において、物件の売却は重要なポイントです。適切な不動産会社を選ぶことで、より良い条件での売却が可能になり、投資全体の成果に大きな影響を与えます。投資物件の売却を依頼する際の不動産会社の選び方について詳しく解説します。
実績と経験を重視する
まず重要なのは、投資用不動産の取扱実績が豊富な会社を選ぶことです。投資用不動産は一般の住宅とは異なる特性を持つため、その取り扱いに精通した会社を選ぶことが望ましいです。過去の取引件数や取引価格帯、扱っている物件タイプなどを確認し、自身の物件と同様の案件を多く扱っている会社を選びましょう。
また、その地域の不動産市場に精通している会社を選ぶことも大切です。地域の相場感や需給バランス、将来の開発計画などの情報を持っている会社は、適切な価格設定と効果的な販売戦略を立てることができます。
営業力と広告力を確認する
売却を成功させるためには、物件を効果的にアピールできる広告戦略を持っている会社を選ぶことが重要です。主要な不動産ポータルサイトへの掲載や自社ウェブサイトでのPRが充実しているか確認しましょう。同時に、チラシ、看板、不動産情報誌への掲載などのオフライン戦略も重要です。特に投資用不動産の場合、投資家向けの専門的なチャネルを持っているかどうかも重要なポイントとなります。
営業担当者の質も売却成功の鍵を握ります。物件の特徴を的確に説明し、買主の要望を理解できる能力が求められます。実際に営業担当者と面談し、その対応や知識レベルを確認することをおすすめします。経験豊富で、投資用不動産の特性を理解している担当者であれば、適切な買主とのマッチングも期待できるでしょう。
透明性と信頼性を重視する
不動産取引は大きな金額を扱うため、透明性と信頼性は非常に重要です。取引の流れが明確に説明されているか、手数料体系が明確で隠れた費用がないか、契約書の内容を丁寧に説明してくれるかなどを確認しましょう。また、会社の財務状況や経営理念が公開されているかどうかも、信頼性の指標となります。
顧客の評判や口コミも参考になりますが、インターネット上の情報だけでなく、可能であれば実際に取引経験のある人から話を聞くことも検討しましょう。良い評判だけでなく、問題が発生した際にどのように対応したかという点も重要な情報です。
アフターフォローの質を評価する
売却後のサポート体制が整っている会社を選ぶことも大切です。特に、税務面でのアドバイスや法律面でのサポートは重要です。売却に伴う税金の計算や申告のサポート、契約書の作成や登記手続きのサポートなど、専門的な知識が必要な部分をカバーしてくれる会社は心強い味方となります。
また、売却後に問題が発生した場合の対応体制も確認しておくべきです。アフターフォローの質が高い会社であれば、売却後のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな取引の完了を助けてくれるでしょう。

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