築古マンションを所有している方は、売却にあたっていくつか注意したいポイントがあります。築古マンションのオーナーでそろそろ売却を検討し始めようとしている方、将来的な出口戦略を考えようとする方には必見の情報です。
築古マンションとは
「築古マンション」とはよく聞く言葉ですが、建設されてから何年経ったものを築古と言うのでしょうか。一般的には、建設から30年以上が経過した物件を「築古」と言います。特に、旧耐震基準で建築された物件を指すことが多くあります。物件が取り壊されることは少ないため、築古マンションは今後も増加を続けると考えられます。築浅物件と築古物件では、市場相場が異なりますので、売却を進める前に違いをしっかりと把握しておきましょう。
築古マンションのリスクとは
売却できない
築古マンションは購入者がローンを組みづらい場合があり、築浅の物件と比べて売却に難航するケースが多くあります。購入者は築浅の物件を好む傾向にあり、予算が許せば築浅物件を優先します。そのため、築古物件は予算がない場合に選択肢となることが多く、売り手が希望する価格では売却できないケースもよく見られます。
地震に弱い
1981年5月31日までの耐震基準は「旧耐震基準」と呼ばれ、震度5強程度の揺れで倒壊せず、破損したとしても補修により生活が可能な構造基準となっています。それ以降の基準を新耐震基準と呼び、震度6強、7程度の地震でも倒壊しない水準へと改められました。
建て替えできない
物件の老朽化に伴い、建て替えという選択肢が浮上することもあります。しかし、マンションの住民の意向はさまざまで、管理組合が承認するほどの賛成票が集まることは決して多くありません。建て替えには高額な費用負担が住民に発生し、建て替えのプロセスも複雑であることなどが理由です。
空室率が高い
築浅の物件と比較した場合、築古の場合は設備や外観などで見劣りしがちなことから、競争力がどうしても低くなってしまいます。物件を検索する際に「築年数」を条件とする人も多く、築古物件は対象から外れてしまうこともよくあります。築古物件は一般的に入居者が見つかりづらく、空室率が高い傾向にあるのです。
管理費等の値上げ
長期修繕計画に基づき、管理費や修繕積立金が改定されることはよくあります。築古物件の場合、老朽化に伴い修繕が差し迫った課題となっていることが多いため、そうしたタイミングで値上げされることがあります。
修繕工事
配管やエレベーター、貯水槽の交換、屋上防水工事など、マンションにはさまざまな修繕工事がつきものです。築古物件であれば、想定外の工事が必要になることもあります。
売買取引で築古マンションがネックになる部分
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マンションの寿命はわからないもの?
RC造、SRC造のマンションの場合、法定耐用年数は47年とされています。しっかりとメンテナンスを行えば寿命は100年とも言われますが、日本ではほぼ実例がありません。躯体のコンクリートに問題がなくても、配管などの設備の老朽化により、建て替えを余儀なくされることもあります。マンションの寿命は正確に分からない、と考えるべきでしょう。
築古マンションを売る方法
リノベーションする
築古マンションは外観などで見劣りしがちですが、リノベーションを行うことで内見時に良いイメージを持ってもらうと、購入希望者の志望度が大きく上がることもあります。和室を洋室にしたり、部屋をつなげてLDKにしたりして、今人気のある間取りにすると、大きな効果が得られるかもしれません。また、デザイン性の高い建具を採用しても良いでしょう。
価格を安くする
近隣の売り出し物件のなかで最安値となる価格帯を設定し、購入希望者にアピールするという方法もあります。とにかく価格を下げることを優先し、リフォームやリノベーションは行いません。
価格は、購入希望者にとって優先度の高い条件であることが多いため、なかなか内見申し込みがない場合などは、価格の見直しを検討しましょう。
オーナーチェンジで売却する
物件を賃貸にしてオーナーチェンジ投資物件として販売するのも良いでしょう。仮に売却できなかったとしても、家賃収入を得ることができるため、しばらくは所有しておき、その後物件の売却価格を下げて改めて売り出すという方法もあります。
業者買取
リフォーム再販業者に買い取ってもらうのも1つです。いつ売れるか分からない物件の売り出しに時間をかけるより、業者に買い取ってもらうほうが早く進み、手間もかからないケースもあります。業者買取を進める場合は、数社を比較することを心がけましょう。
築古マンションの売却で重要となるプロセス
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築古マンション購入のメリット
管理状態を確認できる
ここからは視点を変えて、購入者にとってのメリットをご紹介しましょう。築古マンションを販売する際のセールストークに使えることもあります。
まず、築古マンションの場合はすでに長年にわたって管理されている物件であるため、今後の管理や修繕に関する予想がつきやすいというメリットがあります。「マンションは管理を買え」と言われるほど、管理は大切なものです。購入者にとっての資産価値に大きく影響する要素であるだけに、管理状態を確認できるというメリットは非常に大きな意味を持つのです。
価格が下がりづらい
物件の価格の下落は、25年程度で鈍化すると言われます。築年数が25年以上となっていれば、価格は下がりづらいと考えてよいでしょう。こうした点は、購入者にとってもメリットとなります。
立地が良い物件が多い
築古物件は、駅前などの好立地で分譲されていることがよくあります。今後開発が難しいエリアである場合は、希少価値が高まります。立地の良さは、築浅物件と比較した場合の大きなメリットです。
プロは築古マンション投資はおすすめする?
築古マンションの売却事例
築古マンションで長期賃貸
Aさんは築40年区分マンションを品川区に所有し、賃貸物件として運営していました。物件の老朽化に伴い、今後の管理や修繕の負担が気がかりになってきたため、売却を検討しはじめます。現在の入居者は15年にわたって契約を更新しており、たまにエアコンや照明が不具合が起きて交換や修理の対応をする程度と、大きな問題はありませんでした。長年契約をしていたため、家賃は相場より1割程度高く、利回りの良い物件であることが分かりました。物件には売り出しと同時に4件の申し込みがあり、相場価格より1割ほど高く売却することができました。また、退去後のリフォーム費用の負担もなかったため、Aさんは売却により大きなメリットを得ることができました。
買取でリフォームいらず
Bさんは、親から相続した杉並区の築45年のマンションを所有しています。将来的に自身が使用する予定も、子供に相続する予定もなかったため、売却ができなくなる前に資産整理をしようと考えました。
売却一括査定を依頼したところ、2500万円との回答でした。また、室内のリフォームの見積もりも依頼すると、約600~700万円の負担が必要との回答を得ます。そこでBさんは、リフォームを行わない買取査定をすることにしました。数社見積もると、現状渡しで2200万円で購入したいという業者が現れました。
リフォームを行ってから売却した場合、2500万円からリフォーム代を引いた1800万円が手取りの金額となるため、この業者に2200万円で売却することを決めました。無理をしてリフォームを行うより、高値で売ることができたのです。
築古マンションの売買リスク、実際の事例
代表取締役伊藤幸弘
築古マンションの取引で特にネックになること、それは買い手がローンを組みづらいってことですね。これがほんとネックです。金融機関は減価償却を考慮して融資をするので、RC造のマンションでも築40年を超えると基本的に減価償却の残価をあまり評価しません。「土地代ぐらいしか価値はないでしょう」ということで、ローンが出てこないんです。
それと、やっぱりトラブルが多いんですよね。水漏れだったりとか、設備の不具合。これが本当に厄介です。あとは、築年数の経った物件は入居者の質も悪くなりがちで、滞納問題なども発生する可能性も、新築物件に加えて高いです。
築古マンションはいろいろ問題を抱えてるんです。ローンの問題、建物自体の劣化の問題、入居者の質の問題。これらが絡み合って、取引をする上でのネックになってるんです。だから、こういう物件を扱う時は、これらの問題を全部頭に入れておかないといけない。簡単に「はい、取引成立」ってわけにはいかないんです。