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空室対策としてリノベーションは有効?それまでに取り組むべき対策

空室対策としてリノベーションは有効?それまでに取り組むべき対策

賃貸不動産の空室は、オーナーにとって最も深刻な経営課題の一つです。対策せずに賃貸経営をするのはおすすめできません。空室対策としてリノベーションも有効ですが、そのほかに効果的な対策があることをご存じでしょうか。

空室対策におけるリノベーションの意味を明確にし、それ以前に取り組むべき効果的な対策について解説します。
空室対策としてリノベーションは有効?それまでに取り組むべき対策

空室対策でリノベーションは本当に有効?冷静に判断すべきポイント

空室が続く賃貸物件において、リノベーションは有効な解決策の一つです。しかし、多額の費用と時間を要するリノベーションは、一般的に「最後の手段」として位置づけられています。

まずは、賃貸経営におけるリノベーションの意義と実施する際の判断基準について解説します。

リノベーションが最後の手段である理由

リノベーションが最終手段である最大の理由として、費用対効果が挙げられます。たとえば、バス・トイレ分離工事の場合、費用は100〜180万円かかりますが、家賃アップ効果は7,000〜15,000円程度でしょう。そのため、投資の回収期間が長期化するリスクがあります。

工事期間中は物件を貸し出すことができないため、その期間の家賃収入を完全に失うことになります。工事期間中の機会損失と工事費用を合わせると、相当な投資額になるのです。

また、リノベーションを行っても必ず空室が解消されるわけではありません。空室の根本的な問題が立地や管理体制にある場合、いくら内装を改善しても効果は限定的になってしまいます。

空室の本当の原因分析が最重要

賃貸物件の空室対策を成功させるためには、空室の原因を正確に把握することが不可欠です。立地、アクセス(最寄り駅からの距離)、周辺環境や治安状況などの問題は、リノベーションでは解決できません。

家賃や初期費用が市場相場と乖離している場合、設備の投資よりも価格調整のほうが即効性があります。管理会社や不動産会社に問題がある場合、担当者の営業力不足や募集活動の問題を改善しなくてはいけません。

物件スペック(間取り、設備、築年数など)が原因の場合、ようやくリノベーションが有効な選択肢となるのです。

競合物件との比較が判断の分かれ目

リノベーションの実施を決定する上で、競合物件との比較分析は欠かせません。家賃水準、敷金・礼金などの初期費用、設備仕様、築年数、管理状況などを多角的に比較し、リノベーション以外の手段で競争力を高められる可能性を探ることが重要です。

特に注意すべきは、競合物件よりも明らかに優れた条件であるにもかかわらず、空室が長く続いている場合です。このような状況では、問題が物件スペック以外にある可能性が高く、リノベーションでは根本的な解決にならない可能性があります。

ターゲット層の実際のニーズ把握

効果的なリノベーションを実施するためには、想定する入居者層のニーズを正確に把握することが必要です。たとえば、単身者は利便性とコストパフォーマンスを重視し、ファミリー世帯は安全性と住環境を優先する傾向があるといわれています。

また、近年はリモートワークの普及により働き方が多様化し、設備や間取りへのニーズも高まっています。重要なのは、実際の内見者や入居者からのフィードバックを収集し、現実的なニーズを把握することです。

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リノベーションより効果的!低コスト空室対策10選

リノベーションを検討する前に、低コストで即効性の高い空室対策を実施することが重要です。投資の回収期間が短く、リスクも限定的なので参考にしてみてください。

家賃・初期費用の適正化

空室対策で最も即効性が高いのは価格調整です。2025年5月時点で、東京23区を含む首都圏のマンション・アパートの募集家賃は、全面積帯で前年同月を上回っています(アットホーム「2025年5月 全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向」)。ただし、個別の物件レベルで適正価格を見極めることが重要です。

空室が長期間続いている場合は、思い切った家賃調整が必要です。初期費用についても、敷金・礼金・仲介手数料などの見直しが効果的なため、入居のハードルを下げることで入居決定につながるでしょう。

募集条件の緩和で入居間口を拡大

ペット飼育可、楽器演奏可、高齢者歓迎、外国人歓迎など、従来なら対象外だった入居者層を取り込むのも一つの方法です。追加コストをかけずに実施できるので、空室に効果的だといわれています。

管理・仲介会社の営業力見直し

管理会社の変更は、月額数千円でのコスト調整で可能な場合が多く、費用対効果が極めて高い対策です。内見案内の頻度、入居者募集の質、営業担当者のスキルレベルなどを総合的に判断し、より積極的な営業活動を行う管理会社への変更を検討しましょう。

複数社での同時募集による露出拡大

一般媒介契約を活用し、複数の仲介会社で同時募集を行うことで市場露出度を最大化できます。異なる仲介会社はそれぞれ独自の顧客層や営業ルートを持っているため、より多くの潜在的入居者にリーチできます。

プロ撮影による写真・広告の改善

プロのカメラマンによる撮影は、数万円の投資で物件の魅力を最大限に引き出すことができるため、費用対効果の極めて高い施策です。適切な角度、照明、構図により、同じ物件でも格段に魅力的に見せることができます。

ホームステージングの活用

ホームステージングは家具をレンタルし、モデルルームのような空間を演出することです。20万円前後の費用で、空室でも生活感のある魅力的な空間を作れます。

様々なライフスタイルに対応した提案を行えることがメリットで、欧米で広く取り入れられている方法だといわれています。

ハウスクリーニング・小修繕の徹底

プロによるハウスクリーニングは数万円の投資で、物件の印象を改善できる基本的な対策です。壁紙の部分的な貼り替え、床の傷の補修、水回りの水垢除去など、清潔感のある部屋を実現できます。

照明器具の交換による印象改善

古いタイプの照明器具をLEDシーリングライトに交換することで、室内の明るさと清潔感を大幅に向上させることができます。数万円程度の費用で実施でき、即座に効果を実感できる改善策です。

ウォシュレット・エアコン等の設備追加

ウォシュレットとエアコンは現代の賃貸市場では必須設備となっています。ウォシュレット設置の費用は約12〜18万円で、家賃アップ効果は3,000〜7,000円程度が期待できるため、比較的短期間での投資回収が見込めるでしょう。

インターネット無料化による差別化

テレワークをする方が増加している影響もあり、インターネットが無料でできる物件の人気が高まっています。月額数千円のコストで競合物件と差別化も図れる優秀な施策です。

インターネット無料は、特に若年層や在宅ワーカーにとって重要な判断基準となっており、実質的な家賃競争力を大幅に向上させることができます。

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リノベーションを実施すべきかの判断基準

低コスト対策を実施してもなお空室が解消されない場合、リノベーションが有効な選択肢となる可能性があります。しかし、多額の投資を伴うため慎重な判断が必要です。

リノベーションをするかどうかの判断基準について以下で詳しく解説します。

低コスト対策を全て実施済みが前提

リノベーションを検討する前提条件として、低コストの対策がすでに実施済みであることが必要です。価格調整、条件緩和、管理会社見直し、設備改善など、可能な限りの対策を講じた上で、それでも競争力に課題がある場合にのみリノベーションを検討すべきです。

明確な設備・仕様の劣位要因の存在

リノベーションが有効なケースは、競合物件と比較して明確な劣位要因が設備や仕様面に存在する場合です。たとえば、3点ユニットバスしかない物件において、周辺の競合物件がすべてバス・トイレ別になっている場合などが該当します。

近年、3点ユニットバスは敬遠されがちです。特にファミリー層やカップル向け物件では「バス・トイレ別」が必須条件になることも多いため、リノベーションをしてもよいでしょう。

投資回収の確実性が見込めること

リノベーション実施の最終的な判断基準は投資回収の確実性です。一般的にリノベーションにおける投資の回収期間は10年以内が目安とされ、年10%以上の利回りが確保できる場合に費用対効果が高いと判断されます。

投資回収の計算においては、単純な家賃上昇効果だけでなく、空室期間の短縮効果、家賃下落の抑制効果も含めて総合的に評価することが重要です。

物件の将来的な売却価値の向上効果も視野に入れ、長期的な資産価値の観点から検証する必要があります。

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費用対効果の高い空室対策リノベーション4選

リノベーションが必要と判断された場合、限られた予算で最大の効果を得るために、費用対効果の高い改修箇所を選択することが重要です。以下に、特に効果の高い4つのリノベーションパターンをご紹介します。

バス・トイレ分離工事の実施判断

バス・トイレ分離工事は、現代の賃貸市場において最も需要の高いリノベーションの一つです。特に、単身者向け物件であってもバス・トイレ別を希望する入居者が増加しており、この改修により大幅な競争力向上が期待できます。

工事の実施判断においては、現在の間取りでバス・トイレ分離が物理的に可能かどうかの構造調査が前提となります。配管の位置、給排水設備の容量、構造上の制約などを詳細に検討し、実現可能性を確認することが重要です。

周辺競合物件のバス・トイレ別比率を調査し、この改修による差別化効果の大きさを評価することも必要です。

水回り設備現代化の対象と効果

水回り設備の現代化は、入居者の生活品質に直結する重要な改修項目です。キッチン、洗面所、浴室などの設備を最新のものに更新することで、物件の魅力を大幅に向上させることができます。

キッチンのグレードアップの費用は50〜100万円程度で、家賃アップ効果は3,000〜7,000円程度が期待できます。IHクッキングヒーターや収納力の高いシステムキッチンの導入により、利便性の大幅な向上が図れます。

洗面所については、洗面台の交換、鏡の大型化、収納の充実などにより、日常的な使い勝手を大きく改善できます。

内装の現代化で効果的な改修内容

内装の現代化は、比較的低コストで大きな改善効果を得られるリノベーションです。壁紙、床材、照明などの基本的な内装要素を現代的なスタイルに更新することで、築年数を感じさせない魅力的な空間を創出できます。

特に効果的なのは、畳からフローリングへの変更で、費用は20〜50万円程度、家賃アップ効果は3,000〜7,000円程度が期待できる改修です。若年層を中心に「畳よりフローリング」を好む入居者が増加しており、この改修により大幅な競争力向上が図れます。

壁紙については、白系の清潔感のあるクロスを基調としつつ、アクセントクロスを効果的に使用することで、おしゃれで現代的な印象を演出できます。

DIYで対応可能な部分と専門業者に依頼すべき部分を適切に分離することで、工事費用の削減も可能です。

需要の高い間取り変更パターン

間取り変更は、物件の根本的な価値向上を図ることができる効果的なリノベーション手法です。現代のライフスタイルに合った間取りに変更することで、入居者のニーズに的確に応えることができます。

最も人気が高いのは2DKから1LDKへの変更で、開放感のある空間を好む入居者ニーズに合致するパターンです。壁を取り払ってリビング・ダイニング・キッチンを一体化することで、実際の面積以上に広く感じられる空間となります。

間取り変更の費用は数十万円〜数百万円かかりますが、家賃アップ効果は5,000〜10,000円程度といわれているため、実施する際は慎重に検討することが大切です。

また、大規模な間取り変更を行う場合、構造上の制約や建築基準法上の制限に注意が必要です。特に、耐力壁の撤去を伴う改修については、構造計算書の確認や建築士に確認してから行いましょう。

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それでも空室が解消されない場合の最終手段

あらゆる空室対策を講じて賃貸物件の空室が解消されない場合、根本的な問題を認識し、最終的な判断を下すことが必要です。空室が解消できないときの出口戦略について説明します。

売却を検討すべき経済的判断基準

継続的な賃貸経営が経済的に困難と判断される場合、売却が最も合理的な選択といえるでしょう。売却判断の基準として、以下の要素を総合的に評価することが重要です。

まず、年間の収支がマイナスになっている状況が継続しており、改善の見込みが立たない場合は売却を検討すべきです。特に、空室率50%以上の状態が12カ月以上継続している場合、リノベーションでの解決が難しい問題である可能性が高いといえます。

大規模修繕や設備更新などの必要投資額が、物件の収益性を大幅に上回る場合も売却検討の対象となります。投資回収期間が15年を超える大規模投資は、一般的にリスクが高すぎると判断されます。

市場環境変化による売却タイミング

不動産市場の動向を踏まえた売却タイミングの見極めも重要な判断要素です。2025年の三菱地所リアルエステートサービスのデータでは、東京にあるオフィスビルの賃料は横ばいになっているという報告もあります。

地域や物件の状態によって売却価格は大きく異なります。売却を検討する際は、不動産市況、金利動向、税制改正などの影響を総合的に考慮することが大切です。市場が活況な時期に売却することで、より良い条件での取引が期待できます。

逆に、市場が低迷している時期であれば、一時的に賃貸経営を継続し、市況回復を待つという判断も考えられます。ただし、物件の劣化が進行する前に適切なタイミングで決断することが重要です。

売却が有利なケースの見極め

売却で条件が有利になるケースとしては、周辺の再開発計画や交通インフラの整備により、将来的な資産価値の上昇が見込まれる場合があります。タイミング良く売却することで、賃貸収益よりも売却益の方が大きくなる可能性があります。

築年数が古く、大規模修繕も必要なタイミングにある物件では、修繕費用を投じるよりも売却した方が経済的に有利な場合があります。特に、修繕費用が数千万円規模になる場合は、費用対効果を慎重に検討しましょう。

相続対策や資産の流動化を図りたい場合も、売却を検討する適切なタイミングといえます。賃貸経営の継続が困難な状況下では、早期の売却により資産の有効活用を図ることが賢明な判断となります。

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コラム監修

コラム監修

伊藤 幸弘(いとう ゆきひろ)
株式会社TOCHU(トウチュウ)代表取締役
投資マンション専門家/不動産コンサルタント

プロフィール

2002年より投資用中古ワンルームマンション売買のキャリアをスタートし、現場での売主・買主双方のリアルな課題解決を通じて、個人投資家の資産形成支援に従事。
2014年に株式会社東・仲(現:株式会社TOCHU)を立ち上げ、通算の取扱実績は20,000件以上。
2025年からは業界初の価格透明化サービス「TOCHU iBuyer」を展開し、中古投資マンション市場の健全化を推進。
「誠実な取引こそが市場の信頼をつくる」という理念のもと、投資マンションの適正な価値形成を目指して活動している。

保有資格

・公認 不動産コンサルティングマスター
・宅地建物取引士
・ファイナンシャル・プランニング技能士
・賃貸不動産経営管理士
・投資不動産取引士
・競売不動産取扱主任者
・日本不動産仲裁機構 認定ADR調停人

著書・実績

『投資ワンルームマンションをはじめて売却する方に必ず読んでほしい成功法則』(クロスメディア・パブリッシング)

『マンション投資IQアップの法則 〜なんとなく投資用マンションを所有している君へ〜』(CHICORA BOOKS)

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