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不動産投資で法人化するメリット・デメリット|法人化すべきタイミングとやり方を解説
不動産投資で「法人化」という言葉を耳にしても、実際にどんなメリットやデメリットがあるのか、分からないという方は多いはずです。
個人投資と法人投資とでは、節税や資金調達、相続対策など仕組みや得られる効果が大きく異なります。
さらに、法人化のタイミングや手続きを誤ると、逆に損失を招く可能性もあるため注意が必要です。
不動産投資で失敗しないためにも、法人化の基礎から注意点まで、きちんと理解しておきましょう。
目次
不動産投資で法人化するメリットとデメリット
不動産投資の法人化には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。
ここでは法人化の基本概念から、具体的なメリット・デメリットまで詳しく解説していきます。
不動産投資の法人化とは?
不動産投資の法人化とは、法人を設立して個人で行っている不動産投資の運営を法人主体で行うことです。新しく事業を行うための会社ではなく、不動産の取得や管理が目的です。
法人化の主な流れ
- 法人設立準備
- 定款作成と認証
- 法務局で登記申請
- 会社の設立
- 各種届出
- 法人口座開設
- 個人所有の不動産を法人に移転
- 法人として不動産投資を継続
従来は富裕層の税務対策として活用されてきました。しかし、近年では年収の高いサラリーマンが副業として不動産投資を行う際の節税手段としても注目されています。
法人化により税制面でのメリットを享受できるため、一定の条件を満たす投資家にとって有効な選択肢となっています。
法人化するメリット
不動産投資で法人化するメリットにはどんなものがあるのでしょうか。ここでは、不動産投資の法人化をするメリットを4つご紹介します。
より大きな節税効果が期待できる
法人化の最大のメリットは、節税効果が大きい点です。特に相続税対策として、法人化は有効な手段となります。
不動産投資の法人化で得られる節税メリットは以下の通りです。
- 相続財産の金額を抑えられる
- 不動産の評価額が下がり、相続税が安くなる場合がある
- 相続税の支払い時期や方法を調整しやすい
家族を役員にすることで、家族の間で収入を分けられるので、所得税の節税効果が期待できます。
また、法人が所有する不動産は、相続時に株式(自社株)として間接的に評価されます。そのため、個人所有の不動産と比べて相続税の負担が軽減されるケースがあります。
ただし、株式の評価額は法人の資産や利益などによって決まるため、必ずしも個人で不動産を所有するより納税額が下がるとは限りません。
さらに、法人の代表者が亡くなっても、不動産の所有権は法人のまま変わりません。これにより、納税や事業承継のタイミングなどについて、柔軟な対応ができるのも法人化のメリットの一つです。
経費で計上できる幅が広がる
不動産投資の法人化により、経費計上できる幅が広がります。これは個人と法人の税制上の違いによるものです。
以下は、不動産の譲渡について損失が出たときの比較です。
- 個人の場合は、分離課税として譲渡による損失をほかの所得と合算できない
- 法人の場合は、他の収支と合算して経費計上ができる
法人化することで、経費計上できる費用が増えるため、節税メリットを高めることができます。
損失を最長10年間も繰り越せる
個人の場合、不動産の損失は3年間しか繰り越しができませんが、法人化して青色申告を利用した場合、発生した損失を最長10年間繰り越すことができます。
損失を繰り越すことによるメリットは以下の通りです。
- 赤字年度の損失を将来の黒字と相殺できる
- 長期間にわたる節税効果を継続できる
不動産投資では空室増加や大規模修繕により赤字が発生することがあります。
法人化していれば、その赤字を最長10年間繰り越して将来の利益と相殺できるため、長期的な視点での税務戦略が立てやすくなります。
投資の資金調達がしやすくなる
法人化をすると「信用力の向上」や「融資面での評価向上」が期待でき、資金調達がしやすくなるといわれています。特に複数棟・多数戸の物件を保有し、規模拡大を目指している場合に有利になるでしょう。
また、法人の場合は「任意償却」として、法定耐用年数と償却限度額の範囲内でその年の経費を自分で調整することが可能です。これにより、毎年の利益や納税額をコントロールしやすくなります。
ただし、任意償却の活用は会計上や銀行の評価で注意が必要な場合もあるため、事前に税理士など専門家に相談するのがおすすめです。
法人化するデメリット
不動産投資の法人化にはメリットがある一方で、デメリットもあります。ここでは、法人化のデメリットを2つご紹介します。
社会保険や税務の負担が増える
法人化するデメリットの1つ目は「社会保険や税務の負担が増える」ことです。
法人設立には初期費用とランニングコストが発生します。そのため、個人事業主と比較して負担が大幅に増加します。
法人設立で発生する主な費用は以下の通りです。
費用 | 相場 |
---|---|
設立費用 | 株式会社の場合:20~30万円
合同会社の場合:6~10万円 |
社会保険料の負担(法人は強制加入) | 会社と従業員が原則50%ずつ負担 |
税理士などの専門家への報酬 | 3~10万円 |
法人を設立すると節税効果が期待できる一方で、コストが増加する点には注意してください。
また、法人の会計は個人と比べても複雑なため、専門家に依頼するコストも視野に入れておかなければなりません。
税制優遇が適用されないことがある
法人化するデメリットの2つ目は「税制優遇が適用されないことがある」ことです。
法人化をすると、経費計上できる幅が広がったり相続税対策ができたりする一方で、個人に適用されていた税制優遇措置を受けられなくなる場合があります。
法人化すると不動産売却時の税制優遇が受けられなくなります。
所有期間 | 個人 | 法人 |
---|---|---|
5年超 | 20% | 約30~40% |
5年以下 | 39% | 約30~40% |
個人の場合、5年超の長期で所有している物件を売却すると軽減税率が適用され、税金の支払いは売却金額の20%となります。
一方、法人の場合は長期所有のメリットを受けられず、売却金額の30〜40%の税金が発生します。
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不動産投資で法人化するときの目安
法人化を検討すべきタイミングは、収入規模や物件数などの条件によって変わります。
ここでは具体的な数値基準を示しながら、法人化が有効となる状況を詳しく解説します。
サラリーマンで年収900万円を超える場合
年収900万円を超えるサラリーマンは、法人化することで大きな節税効果を期待できます。
個人の所得税率は課税所得が900万円超〜1,800万円以下で33%です。ただし、累進課税制度(所得金額が高いほど税率が高くなる)により、年収や控除内容によって変動します。
法人税率は中小企業の場合、所得800万円以下が15%、超過分は23.2%(※2024年6月時点)となっています。
【税率比較と節税効果】
- 個人税率:所得税33% + 住民税10% = 43%
- 法人税率:15~23.2% + 地方税など
結果として、1年間で節税できる金額は50万円以上が見込まれます。
ただし、勤務先が副業を禁止している場合は、法人設立が就業規則違反となる可能性があるため、事前に人事担当者への確認が必須です。
副業の有無によって法人化の実現が大きく左右されるため、慎重な判断が求められます。
年間の不動産所得が330万円を超える場合
サラリーマンの方で年収が900万円を超える場合以外にも、不動産所得が330万円を超えると、個人から法人化による節税メリットが得られます。
- 個人の場合:所得税率20%
- 法人の場合:所得税率15%
不動産所得が195万円以下では個人と法人の税率がほぼ同等となるため、法人化のメリットは限定的です。しかし、330万円を超える所得がある場合、法人化により年間100万円以上の節税効果を実現できる可能性があります。
法人設立費用や税理士報酬などのランニングコストを考慮しても、十分に投資金額の回収が見込めるため、積極的な検討をおすすめします。
10室以上の賃貸物件を経営している場合
10室以上の賃貸物件を経営している場合、不動産投資が「事業的規模」として認定されるため、法人化による恩恵を最大限に得られます。
事業的規模認定を受けるメリットは以下の通りです。
- 青色申告特別控除:最大65万円
- 事業所得としての損益通算範囲拡大
- 法人化時の組織的運営体制構築
一般的に「5棟10室」が事業的規模の判定基準です。10室以上であれば、単なる資産運用ではなく事業経営と認められるため、法人設立が有利になります。
さらに、将来的な相続対策や事業承継を考える際も、法人形態での運営が有効となる機会が多いため、早期に法人化を検討してもいいでしょう。
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不動産投資で法人化するときのやり方
法人設立には複数のステップがあり、適切な手順で進めることが重要です。
ここからは、会社の種類選択から登記完了まで、具体的な流れを詳しく解説します。
会社の種類を決める
法人化するには、最初に会社の種類を決めます。
- 株式会社
- 合同会社
- 合資会社
- 合名会社
中でも不動産投資の法人化において選択されやすいのは、株式会社と合同会社です。
そこで、株式会社と合同会社の違いを以下の表にまとめました。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
設立費用 | 約20~30万円 | 約6~10万円 |
定款認証 | 必要 | 不要 |
社会的信用度 | 高い | 普通 |
意思決定の柔軟性 | 制限あり | 高い |
株式会社は設立のための費用や手間がかかりますが、社会的な信用度が高く融資を受けやすいメリットがあります。
一方で、合同会社は設立費用が抑えられ、手続きも簡素化されるといったメリットがあります。
法人化するための基本情報を決める
次に会社を設立する上で必要な基本情報を定めていきます。これらの情報は後述する定款作成時に必要となるため、慎重に検討することが重要です。
【設立時に決定すべき基本情報】
- 会社名
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金の額
- 出資者および出資額
- 発行可能株式総数
- 株式譲渡制限の有無
- 事業年度(決算月)
- 設立時取締役・代表取締役
- 公告の方法
特に事業目的は将来の事業展開を見据えて幅広く設定しておくことで、後の事業目的変更手続きを避けられます。
資本金額は1円から設定可能ですが、金融機関からの信用度を高めるためには適切な金額設定が必要です。
会社の実印を作成する
法人設立時には、会社の実印作成が必要となります。会社運営では複数の印鑑を使い分けることが多く、以下の4種類を準備するのが一般的です。
- 実印
- 銀行印
- 角印
- ゴム印
なかでも、実印は法務局への印鑑登録や各種契約で使用します。
印鑑作成には通常3〜5日程度はかかるため、定款作成と並行して早めに発注することで手続きがスムーズに進められます。
定款の準備と作成を行う
実印作成と並行して、定款の準備・作成を行っていきます。
定款とは、会社の基本的なルールを定めた文書のことで、簡単に説明すると「会社の決まり」です。
定款には以下の3種類あり、中でも絶対的記載事項は必ず記載しなければなりません。
- 絶対的記載事項
- 相対的記載事項
- 任意的記載事項
株式会社の場合は、定款作成後に公証役場での認証手続きが必要となるため、認証手数料として5万円程度がかかります。
一方、合同会社では定款認証が不要なため、この手続きを省略できて費用と時間を節約できる利点があります。
資本金を準備して支払う
定款認証後には、発起人が指定した銀行口座に資本金を支払います。
資本金は1円から設定可能ですが、金融機関からの信用力を考慮して100万円以上を設定することが多いようです。
設立登記申請の準備をする
法務局への登記申請には多数の書類が必要となります。書類に不備があると登記完了が遅れるため、事前にしっかりと準備することが重要です。
【主な必要書類】
- 登記申請書
- 登録免許税の収入印紙
- 認証済みの定款
- 発起人決定書
- 設立時取締役・代表取締役就任承諾書
- 取締役の印鑑証明書
- 資本金払込証明書
- 印鑑届出書
- 登記事項を記録したCD-R
必要書類を法務局に提出すると、通常10日程度で登記が完了します。登記完了日が会社の設立日となるため、この日から正式に法人として活動開始できます。
法人設立ワンストップサービスを利用する
法人設立ワンストップサービスを利用すれば、オンラインで24時間いつでも手続きできます。
法人設立ワンストップサービスとは、マイナポータルを通じて複数の行政手続きを一括で行えるデジタルサービスのことです。
法人設立ワンストップサービスでできることは以下の通りです。
- 法人設立登記
- 税務署への設立届出
- 都道府県・市区町村への法人設立届出
- 社会保険関係の手続き
ただし、すべての手続きがオンライン化されているわけではなく、一部は従来通りの紙ベース手続きが必要な場合もあるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

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