投資マンション売却
【徹底解説】投資用マンションの売却にかかる費用はどれくらい?

不動産投資をいったん手じまいし、投資用マンションを売却するときには、さまざまな費用がかかります。マンションを売却した代金すべてではなく、さまざまな費用を差し引いた残りが自分のものになることに注意しましょう。
投資用マンションを売却するときにかかる、さまざまな費用について解説します。思わぬ費用に慌てないよう、あらかじめ把握しておくことが大切です。

目次
投資用マンション売却の費用一覧
投資用マンションを売却するときには、さまざまな費用がかかります。
ただし、費用のなかには必ずかかるものと、そうではないものがあります。そのため、自身の状況と照らし合わせて、必要な費用を売却の前に整理して、しっかりと資金計画を立てましょう。
| 費用の種類 | 費用が必須か否か |
|---|---|
| 仲介手数料(仲介で売却する場合) | 必須 |
| 印紙税 | 必須 |
| 預かり敷金 | 必須 |
| 抵当権抹消費用 | 場合による |
| 住宅ローンの返済手数料 | 場合による |
| 管理中途解約違約金 | 場合による |
| 譲渡所得税 | 場合による |
それぞれの費用について、ひとつずつ詳しく解説します。
仲介手数料
仲介手数料とは、不動産会社に売買を仲介してもらい、成約に至ったときに支払う報酬のことです。売却価格に合わせて上限額が設けられており、上限の範囲内で請求されます。
| 売却価格 | 上限額 |
|---|---|
| 200万円以下 | 売却代金×5% |
| 200万円超過~400万円以下 | 売却代金×4%+2万円 |
| 400万円超過 | 売却代金×3%+6万円 |
仲介手数料は成功報酬のため、契約の期日までに買主を見つけられなければ支払い義務は生じません。複数の不動産会社に売却を依頼していたとしても、成約につなげてくれた1社だけに支払います。
印紙税
印紙税とは、不動産売買契約書のような、課税対象の文書を作成したときにかかる税金のことです。該当文書に購入した印紙を貼り付け、消印することで納付したとみなされます。
| 契約金額 | 税額 |
|---|---|
| 1,000万円超~5,000万円以下 | 1万円 |
| 5,000万円超~1億円以下 | 3万円 |
| 1億円超~5億円以下 | 6万円 |
なお、平成26年4月1日から令和6年3月31日までのあいだに作成される不動産売買契約書のうち、記載金額が10万円を超えるものは軽減措置が適用されます。上記の表は、軽減措置適用後の税額です。
預り敷金
入居者から敷金を預かっている場合、売主は次の物件所有者となる買主へ敷金を引き継がなければなりません。敷金は、万一のときに備えて入居者から一時的に預かっているお金です。所有者の資産ではないため、忘れずに買主へ渡しましょう。
抵当権抹消費用
抵当権抹消費用とは、ローンを組んで購入した不動産に設定されている抵当権を外すためにかかるお金のことです。ひとつの不動産につき1,000円の費用がかかり、マンションであれば土地と建物のそれぞれにかかり、合計2,000円を支払うことになります。
抵当権の抹消は売主だけでも手続きできますが、ローンの残債のある物件を売却する場合は、司法書士へ依頼するのが一般的です。司法書士へ依頼すると、依頼料として別途1万5,000円~2万円の費用がかかります。
ローンの返済手数料
ローンの返済手数料とは、ローンの残債を一括で返すときにかかるお金のことです。手数料の相場は5,000円~3万円ほどで、利用している金融機関や返済方法によって金額が変わります。物件を売りに出す前に、金融機関の担当者に聞いておくとスムーズです。
管理中途解約違約金
管理会社との契約を途中で解約する場合、解約違約金の支払いが必要になることがあります。売却前にいま一度管理委託契約に関する書類をチェックしておきましょう。
中途解約時におけるペナルティや違約金に関する記載がない場合は、支払う必要はありません。もし、のちのちトラブルになるのが不安であれば、管理会社の担当者に確かめておくと安心です。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産売却で利益が発生したときに支払う税金のことで、所得税と住民税、復興特別所得税の3つを合わせてそう呼びます。
譲渡所得税は、物件の所有期間によって税率が変わる点に注意が必要です。所有期間が5年を超過している物件は20.315%、5年未満の物件は39.63%と約2倍も変わります。
| 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 | |
|---|---|---|---|---|
| 長期譲渡所得(5年超過の所有) | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
| 短期譲渡所得(5年未満の所有) | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
投資用マンションを高く売るポイント
投資用マンションを高く売却する方法を3つ紹介します。少しでも高値で売却できるよう、紹介する方法を押さえておきましょう。
空室を少なくして売る
少しでも高く売るために、空室をできるだけ減らしましょう。投資用マンションは、利回りが高ければ高いほど早期に高値で売却できる傾向にあります。できるだけ空室を減らし、利回りを上げることで高値売却を狙えるでしょう。
建物の美観を整える
物件が一棟の建物だった場合、外観なども重要となってきます。利回りや収益性などが重視されるのが投資用物件ですが、買主なかには、建物の美観を重視する人もいます。きれいな建物であれば入居者を獲得しやすく、空室期間を減らせるためです。
建物周辺の雑草や小石を片づけたり、ゴミ置き場をきれいにしたりといったことであれば自分でも行えます。劣化がひどい場合には、設備交換や修理するのも効果的です。
投資用マンションの売却を得意とする会社に売却依頼する
投資用マンションの売買には、専門知識が必要です。そのため、投資用マンションが得意な不動産会社へ売買を依頼しましょう。
投資用マンションを専門としている不動産会社もあるので、可能であればそういった会社がおすすめです。専門知識を持っているため、正確にマンションの価値を査定し、少しでも高く売却する努力をしてくれるでしょう。
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投資用マンションを売却する流れ
そのときになって慌てないよう、事前に準備手置くことが大切です。投資用マンションを売却するときは、あらかじめ売買の流れや必要な書類を把握しておきましょう。
1.書類の準備
まず、投資用マンションを売却するにあたって必要な書類を用意しましょう。たとえば、以下のような書類を準備しておくと安心です。
| 書類 | 詳細 |
|---|---|
| レントロール | 賃貸借契約の条件を一覧にしたもの |
| 修繕履歴一覧表 | 修繕した箇所や内容などが書かれたもの |
| 長期修繕計画 | 大規模修繕や定期点検に関する情報が載っているもの |
| 建物図面 | 建物のかたちや位置関係を表したもの |
| マンション管理規約 | マンションでの生活に関するルールを記したもの |
投資用マンションは居住用物件と異なり、入居者がいると内覧ができないため、買主は物件の詳細を把握しにくいという特徴があります。物件情報がわかる書類を用意しておくことで、物件の特徴や魅力が伝わりやすくなるでしょう。
2.査定依頼
書類の準備ができたら、不動産会社に物件の査定を依頼します。複数の不動産会社に依頼し、査定価格やサポート内容を比較しましょう。
ここでポイントとなるのは、査定価格に踊らされないことです。査定価格は、あくまでも査定した不動産会社が売れるだろうと考えた価格のことであり、必ず査定価格で売却できるわけではありません。
3.媒介契約の締結
査定を受けて信頼できそうな不動産会社が見つかったら、媒介契約を結びます。媒介契約には、一般媒介契約と専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
それぞれ特徴が異なるため、不動産会社の担当者とよく相談したうえで売主の希望に添った売却ができそうな契約を選びましょう。
4.売却活動の開始
媒介契約を締結すれば、いよいよ売却活動の始まりです。売却活動において売主が個人的に動くことは、ほとんどありません。不動産会社の担当者から連絡が入るまで待ちましょう。
5.条件交渉
購入希望者があらわれたら、条件交渉を行います。条件交渉では、価格の値下げを要求されることがほとんどですが、早く売りたい気持ちが先行するして安易に値下げをしてはいけません。売却にかかる費用のことも考え、妥協することなく交渉を進めましょう。
6.売買契約の締結
うまく交渉がまとまれば、売買契約を結びます。手付金の受領もこの段階で行います。売買契約にかかわる書類は、不動産会社が用意してくれます。売主は、顔写真付きの本人確認書類や印鑑などを準備しましょう。
7.決済・物件引き渡し
買主から引き渡しの日に手付金を差し引いた残りの代金を受領し、決済を済ませます。その後、売主から買主に敷金を引き継ぎ、売却日によっては家賃も精算します。
8.賃貸借契約承継の通知書の送付
最後に賃貸借契約承継の通知書を入居者に送付します。書類は不動産会社が作成し、売主と買主が署名、捺印して送るのが一般的です。
通知書には売買で物件の所有者が変わったことや。家賃の新しい振込先、敷金の引き継ぎに関する情報が記載されています。
早期売却なら買取も検討を
早急に物件を売りたい場合、買取を検討するのもひとつの方法です。買取なら時間をかけることなく物件を現金化でき、赤字続きでも関係なくお金に変えられます。しかし、仲介に比べると、1~3割程度売却価格が安くなることに注意してください。
あなたのマンション・アパートの価格が分かる
コラム監修
伊藤 幸弘(いとう ゆきひろ)
株式会社TOCHU(トウチュウ)代表取締役
投資マンション専門家/不動産コンサルタント
プロフィール
2002年より投資用中古ワンルームマンション売買のキャリアをスタートし、現場での売主・買主双方のリアルな課題解決を通じて、個人投資家の資産形成支援に従事。
2014年に株式会社東・仲(現:株式会社TOCHU)を立ち上げ、通算の取扱実績は20,000件以上。
2025年からは業界初の価格透明化サービス「TOCHU iBuyer」を展開し、中古投資マンション市場の健全化を推進。
「誠実な取引こそが市場の信頼をつくる」という理念のもと、投資マンションの適正な価値形成を目指して活動している。
保有資格
・公認 不動産コンサルティングマスター
・宅地建物取引士
・ファイナンシャル・プランニング技能士
・賃貸不動産経営管理士
・投資不動産取引士
・競売不動産取扱主任者
・日本不動産仲裁機構 認定ADR調停人
著書・実績
『投資ワンルームマンションをはじめて売却する方に必ず読んでほしい成功法則』(クロスメディア・パブリッシング)
『マンション投資IQアップの法則 〜なんとなく投資用マンションを所有している君へ〜』(CHICORA BOOKS)


