築40年のマンションを「売る」か「貸す」か。間違った選択をしないために | TOCHU|投資マンション売却のプロフェッショナル

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築40年のマンションを「売る」か「貸す」か。間違った選択をしないために

築40年のマンションは売るのか貸すのか

築40年のマンションは「売る」または「貸す」のどちらを選択すべきでしょうか。

マンションの寿命や売ったときと貸したときの比較を解説します。築年数が経過したマンションの特徴を理解し、後悔のない選択をしましょう。

築40年のマンションはこれからどうなる?

そもそも、マンションはどのくらい住めるのでしょうか。築40年のマンションが今後どうなってしまうのかについて解説します。

マンションの寿命

2013年に早稲田大学の小松幸夫教授が公表した「建物の平均寿命実態調査」によると、鉄筋コンクリートのマンションの寿命は68年と報告されています。

ここでいう寿命は、マンションが竣工してから解体されるまでの時間であり、物理的に何年もつか、というものではありません。マンションの主要構造であるコンクリートや鉄筋の施行条件、維持管理や修繕頻度などによりますが、物理的には100年以上もつともいわれています。

つまり、物理的にはまだ利用できるが、経済性や機能面からマンションは寿命を迎えて解体されているのです。

マンションの物理的な寿命と耐用年数

伊藤幸弘(株)TOCHU
代表取締役
伊藤幸弘

物理的な寿命と耐用年数、不動産を扱う上で非常に重要な概念ですが、多くの方が混同されている部分でもあります。まず結論から申し上げると、マンションは税法上の耐用年数を超えても、物件は問題なく使用できるということです。

耐用年数とは、税法上で定められた「減価償却を行う期間」のことです。RC造(鉄筋コンクリート造)のマンションの場合、法定耐用年数は47年と定められています。これは実際の建物の寿命とは別の概念で、あくまで税務処理上の基準なのです。

減価償却とは、建物などの資産の価値を一定期間にわたって段階的に経費計上する会計処理です。例えば、4,700万円のRC造マンションを取得した場合、47年間で毎年100万円ずつ経費計上していくというイメージです。

なぜこのような仕組みがあるのかというと、高額な資産を一括で経費計上してしまうと、その年の税金が極端に少なくなってしまい税務上問題となります。逆に、減価償却を行わないと本来経費にできるものができず、税金を払いすぎてしまうことになります。そこで、緩やかに減価償却していくことで適正な課税を実現しているのです。

一方で、現在の建築技術では、RC造の建物は適切なメンテナンスを行えば100年程度は使用可能とされています。つまり、法定耐用年数47年と実際の物理的寿命には大きな差があるのです。

実際に47年を経過したマンションでも、管理状態が良ければ十分に居住可能ですし、賃貸に出すことも全く問題ありません。ただし、これは管理状態によるところが大きいということは付け加えておきます。

築40年のマンションの選択肢

国土交通省の発表によると2022年末時点で、築40年以上のマンションは全国に約125.7万戸あり、10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加するといわれています。

国土交通省「築40年以上のマンションストック数の推移」より

40年以上経過したマンションは、平均的な寿命に徐々に近づいています。寿命を意識すると、築40年のマンションには以下のような選択肢があります。

  • 大規模改修の実施
  • マンションの建替え
  • 「売る」または「貸す」

大規模改修の実施とマンションの建替えは区分所有者一人だけでの判断ではなく、各区分所有者が組合員となって運営される管理組合が決定することになります。

大規模改修とマンションの建替えについて解説し、次章で「売る」と「貸す」を比較していきます。

築古マンションの相談は増加傾向

伊藤幸弘(株)TOCHU
代表取締役
伊藤幸弘

当社への、築古マンションに関する相談は増加しています。特に顕著なのが、親からの相続物件に関する相談です。「自分たちは既に住居を確保しているが、相続で取得した物件をどうするか」というものです。投資用マンションではなく、一般的な分譲マンションです。

築古の分譲マンションの特徴として、50~60㎡程度と現在の住環境基準からすると少し狭い物件が多いことが挙げられます。一括査定サイトなどからの売却問い合わせでも、「実需で住むには狭いが、どう活用すべきか」という相談が目立ちます。

また、興味深いのは、これらの築古マンションは比較的立地の良い場所に建てられていることです。好立地に建設されているため、売却にしても賃貸にしても一定の需要はあります。

大規模改修の実施

築年が経過すると、マンションは機能や性能が劣化していきます。

建物や設備の性能を維持するため、大規模な改修が必要になってきます。分譲マンションの場合、一般的に12〜15年のサイクルで共用部分の大規模改修を実施します。

実際の劣化状況により異なりますが、おおむね1回目の大規模修繕(築12~15年)で屋上や外壁の工事、2回目(24~30年)はエレベーター交換や受変電設備に加え、ドアや窓サッシなど広い範囲で工事を行います。

3回目(36〜45年)には建物全般で工事が発生します。築年数が経過するごとに修繕範囲は広がり、当然費用も膨らみます。そのため、築40年が経過したマンションでは区分所有者が負担する修繕積立金が上昇する傾向にあります。

また、専有部分においても築40年を経過していれば、快適に暮らすためには定期的なリフォームが必要です。トイレや浴槽、キッチンなどの水まわりは15〜20年、フローリングや壁紙などの内装は15年程度がリフォームの目安といわれています。

マンションの建替え

マンションの築年数が経過すると、性能を維持するための修繕改修費用が増大するため、建替えたほうが経済的合理性が高くなります。

しかし、マンションの建替えは非常にハードルが高く、途中で頓挫したり、先送りになるケースが多いです。国土交通省によると、2021年末時点で築50年以上のマンションは全国に21.1万戸あり、マンションの建替え実績は2022年4月時点で累計270件となっています。

国土交通省「マンションを取り巻く現状について」より

マンションの建替えが難航する一番の理由は、建替えに要する費用の問題です。マンションの建替えには、既存マンションの解体、新築の設計および建築費用のほか、工事期間中の仮住まいや引越し費用が発生します。

また、区分所有者の合意形成の難しさも大きな原因です。マンションの建替えは区分所有法により定められており、区分所有者で構成される管理組合で建替えに関する合意形成を行う必要があります。

具体的には、区分所有者の5分の4以上の賛成と、議決権で5分の4以上の賛成による決議が必要です。築年数が経過すれば、区分所有者の高齢化に伴いライフスタイルが変化し、マンションを売却する人が増えます。住環境などが気に入って長期間暮らしている人、中古で購入したばかりの人、管理組合の活動に参加しない人など、区分所有者の意見をまとめあげるのは難しいのです。

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築40年のマンションを「売る」、「貸す」を比較

築40年のマンションを「売る」と「貸す」を比較したものが以下です。

メリット デメリット
売る
  • 売却益が得られる可能性がある
  • 管理費や修繕積立金が不要になる
  • 住宅ローンが完済できないと追加資金が必要になる
  • 仲介手数料や譲渡所得税などの売却コストが発生する
貸す
  • 家賃収入が得られる可能性がある
  • 管理費や修繕積立金が継続的にかかる
  • 貸し出すための初期投資がかかる
  • 賃借人の空室リスクがある

築40年のマンションを売る場合と貸す場合について詳しくみていきましょう。

築40年のマンションを売る

築40年のマンションを売却すると、これまで管理組合に支払っていた管理費や修繕積立金は不要になります。

住宅ローンの残債が少なければ、売却益が発生して手元資金が得られます。注意しなければならないのは、売却価格が大きく下落している場合です。売却価格が下がっていると住宅ローンを完済できないリスクがあります。その場合、自己資金で不足分を穴埋めするか、売却を諦める必要があります。

また、売却価格の設定や売却方法を間違えると、売却するまでに相当な時間を要したり、成約できないリスクがあります。また、マンションを売却する場合、不動産仲介会社に支払う仲介手数料、譲渡所得税や印紙税、抵当権抹消登記費用が発生します。

築40年のマンションを貸す

不動産を保有しながら第三者に貸せば、家賃収入を得られます。家賃収入が住宅ローンや管理費などの維持管理コストを上回れば、安定的な収入を確保できます。

売却する場合と同様に、新築物件と比較して期待できる賃料は下落しています。また築40年を経過すると、賃貸市場での競争力は低下し、空室が続いてしまうおそれがあります。安定した賃貸収入を得るには、キッチンやトイレなどの水まわりや壁紙などをリフォームする初期投資費用が必要になります。

また、賃貸に出す場合、区分所有者として物件は保有し続けるため、修繕積立金や管理費などは継続して負担することになります。

「貸す」選択をする際に、リフォームはどの程度必要?

伊藤幸弘(株)TOCHU
代表取締役
伊藤幸弘

実需用として使用されていた物件を賃貸に転用する場合、想像以上の投資が必要になることを理解していただく必要があります。

水回り設備(キッチン、トイレ、浴室)の全面交換は基本的に必須です。加えて、クロスの張り替え、和室の洋室化、押し入れのクローゼット化、カーペットのフローリング化など、賃貸市場で競争力を持つためには全体的なリニューアルが必要です。

ファミリータイプの分譲マンションの場合、500万~600万円程度の初期投資が必要でしょう。個別の工事は大きな金額ではなくても、トータルでは自分が住むレベルのリフォーム費用がかかると考えてください。

現在は建築コストも上昇しているため、「こんなにかかるの?」と驚かれる方も多いです。

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築40年のマンションを売るか貸すか。プロのアドバイス

伊藤幸弘(株)TOCHU
代表取締役
伊藤幸弘

私は基本的に売却を推奨しています。その理由は明確です。「売るか貸すか悩んでいる」状態であれば、その物件に対する明確な投資戦略がないからです。

多くの相談者は、親が使用していた物件や住み替えで「なんとなく手放したくない」という感情的な理由で保有を検討されます。しかし、明確な目的を持たずに物件を所有している状態では、適切な投資判断は困難です。

投資知識のない方がいきなり賃貸経営を始めても、成功する可能性は低いです。賃貸経営には様々な知識とノウハウが必要で、中途半端な取り組みでは長続きしません。

例外的に賃貸を検討できるのは、以下の条件が揃った場合です。

  • 高立地で十分な賃料が見込める
  • 室内のリノベーション費用が最小限で済む
  • 「最後まで持ち切る」という明確な覚悟がある

ただし、これらの条件を満たす場合でも、初心者が「この物件をどうしようか」から始めているようでは、投資への情熱が不足している可能性が高く、結果的に売却を選択することをお勧めしています。

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一度賃貸にすると、売却する際安くなってしまう可能性が高い

伊藤幸弘(株)TOCHU
代表取締役
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一度賃貸として貸してしまい、入居者がいる状態での売却=オーナーチェンジ物件の売却は、価格面で大きなデメリットがあることを理解しておきましょう。

住まなくなったマンションを空室状態で実需用として売却する場合と、入居者が入った状態でオーナーチェンジ物件として売却する場合では、後者の方が価格が大幅に下落します。一般的に、オーナーチェンジ物件は市場価格の約3割程度安くなってしまいます。

これは投資用物件としての収益性で評価されるため、実需用物件よりも買い手が限定されることが主な理由です。

だからこそ、賃貸に出すなら「最後まで貸し続ける」という明確な覚悟が必要なのです。中途半端な気持ちで賃貸に出してしまうと、後で売却したくなった際に大きな損失を被る可能性があります。

本当に長期的な賃貸経営の覚悟がある方は、通常は住居用物件ではなく、最初から投資用物件を購入されています。

自分に合った選択をするために必要なこと

マンションを売る、または貸すにはそれぞれメリットとデメリットが存在します。そのため、どちらを選択すべきかは人によって異なります。自分に合った選択をするために考えるべきことを紹介します。

ライフプランを明確にする

「売る」か「貸す」を選択するには、まず自身のライフプランを明確にする必要があります。

手狭で引越ししたいなど、マンションを将来利用する可能性がなければ「売る」をメインに考えるでしょうし、転勤などで将来戻りたいのであれば「貸す」という選択になるでしょう。

まずは、「マンションをどうするか」よりも「今後どのようなライフスタイルになるか」について考える必要があります。

市場での価値を把握しておく

築40年のマンションの場合、不動産マーケットでどのような評価をされるかを事前に整理しておくことが重要です。

マンションは築年が経過すれば、価格は下落します。理由としては、新築マンションと比較して、外観などの陳腐化や耐震性の不安、天井の高さや水回りのスペックが見劣りするためです。

また、築40年が経過すると先述のとおり、管理組合が正常に運営することが難しくなるケースが多く、適切な修繕や管理体制が確保できないおそれがあります。一方、立地に希少性があったり、適切に維持管理されたマンションは、築40年が経過しても高い評価が得られます。

マンションの市場価値を調べるには、専門知識が必要になります。築年が経過すればするほど管理状況や管理組合の事業計画などを分析して、評価額に反映する必要があり、評価は複雑になります。間違った判断を行わないために親身になって相談できる不動産会社に相談することをおすすめします。

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築古マンションの資産価値は管理状況次第

伊藤幸弘(株)TOCHU
代表取締役
伊藤幸弘

マンションの管理状況は物件の資産価値を左右する最も重要な要素です。同じ築年数でも、管理状況によって物件の状態は大きく異なります。

これは中古車の例で説明するとわかりやすいでしょう。屋根付きガレージで丁寧に保管されていた車と、青空駐車場に長期間放置されていた車では、同じ年式でも状態が全く違います。マンションも同様で、適切に管理されていれば資産価値は維持・向上しますが、管理が不十分だと急速に劣化します。

築古物件を保有するなら、管理組合への積極的な参加は必須です。大規模修繕工事の計画、修繕積立金の見直し、日常的な維持管理の決定など、重要事項に主体的に関わる必要があります。

管理が資産価値に直結するため、受け身の姿勢では良好な状態を維持できません。自ら管理に参画し、適切な判断を下していくことが重要です。

このような管理業務を負担に感じる方は、築古物件の保有には向いていないと考えます。そうした場合は、やはり売却を選択した方が合理的なのです。

築40年のマンションでも意外と高値で売れたケース

伊藤幸弘(株)TOCHU
代表取締役
伊藤幸弘

築古マンションの隠れた価値として、先述したように立地の優位性が挙げられます。特に都心部の立地は、現在非常に高く評価されています。

資産家層を中心に、都心の不動産への投資需要が高まっています。これはインフレヘッジとしての不動産投資という側面が強く、築年数よりも立地を重視する傾向があります。

私がよく申し上げるのは「山手線内側」の価値です。このエリアであれば、築古でも価格は上昇傾向です。築古マンションは元々好立地に建設されていることが多く、現在では新規の土地取得が困難なエリアに位置していることが価値を押し上げています。

本来であれば築年数の経過とともに価格は下落するはずですが、一部の築古マンションは「ヴィンテージマンション」として高い評価を受けています。昭和時代のマンションでも、デザイン性に優れ、一目で「昭和の名作」とわかるような物件は特に人気があります。

隠れた価値を顕在化させるには、内装が現代的なトレンドに対応していることが重要です。清潔感があり、設備が充実していることで、築年数のハンディキャップを十分に補うことができます。

価格高騰の流れは当面継続すると予想されるため、条件の良い築古マンションには大きなポテンシャルがあると考えています。


					
                
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コラム監修

コラム監修

伊藤幸弘  

資格

宅地建物取引主任者・賃貸不動産経営管理士・FP技能士・公認 不動産コンサルティングマスター・投資不動産取引士・競売不動産取扱主任者・日本不動産仲裁機構ADR調停人

書籍

『投資ワンルームマンションをはじめて売却する方に必ず読んでほしい成功法則』


『マンション投資IQアップの法則 ~なんとなく投資用マンションを所有している君へ~』

プロフィール

2002年から中古投資マンションを専門に取引を行う。
2014年より株式会社TOCHU(とうちゅう)を設立し現在にいたる。

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