ワンルーム投資コラム
事業用不動産の買換え特例を解説。特例活用のメリット・デメリットとは
不動産投資では、様々な控除や特例を活用することで、税金対策をすることができます。
今回は、数ある特例のうちの一つ「事業用資産の買換え特例」を紹介します。
事業用資産の買換え特例とは
まずは事業用資産の買換え特例がどのようなものなのか、説明します。
事業用資産の買換え特例の特徴
事業用資産の買換え特例は、「事業用として使っている土地建物などを売却して、一定期間のうちに新たな資産に買い換えて事業用として使う際に、譲渡利益の80%まで課税を繰り延べられる」という特例です。
例えば、1,000万円の譲渡利益がでた場合、通常ならば全額に対して譲渡税が課税されます。しかし、事業用資産の買換え特例制度を利用することができれば、課税対象額のうち、800万円を繰り延べることができるというのです。
課税額の大部分を先送りすることで税金の支払いが減るため、手元に資金を残すことができます。
ただし、特例を活用するには、以下の条件を満たす必要があります。
◯事業用資産の買換え特例適用の要件
- 売り渡した資産と買い換えた資産が共に事業用である
- 売り渡した資産と買い換えた資産が一定の組み合わせである
- 買い換えた資産が土地の場合は、売り渡した土地等の面積の5倍以内である
- 売却した前年か翌年に買い換える資産を購入している
- 事業用資産を購入してから1年以内に事業で活用する
- 令和5年3月31日までに活用する
上記の要件を満たしている場合のみ、特例制度を活用することができます。なお、適用期限は2020年に改正され、令和5年3月31日に延長されています。
事業用資産の買換え特例の延長はいつまで?
事業用資産の買換え特例制度は、売却した翌年の1月1日から12月31日までに買い換え資産を購入する必要があります。
しかし、以下のようなケースやそれに準じた事情などがあり、税務署長が認定した場合には、最大で翌年の12月31日後2年の延長が可能です。
- 控除などの建設や移転に1年以上の期間がかかるケース
- 法令によって取得計画を変更しなければならないケース
- 売り主とその他の関係者との交渉が長引き時間がかかるケース
上記のように、やむを得ない事情がある場合には、特例における買い換え期間を延長することができる可能性があるため、覚えておくとよいでしょう。
特例を使った譲渡所得の計算方法
金額の大小により、特例制度を活用した譲渡所得税の計算が違います。ここで、売却した金額が買換えた金額より大きい場合と小さい場合、それぞれの計算例を紹介します。
◆売却した金額が買換えた金額よりも小さい場合
13年前に購入した不動産を4,700万円(取得費は2,700万円)で売却し、5,800万円の不動産に買い換えた場合の計算をしてみましょう。
◯前提条件
取得費 | 2,700万円 |
売却額 | 4,700万円 |
所有期間 | 13年 |
譲渡費用 | 150万円 |
買い換え資産の購入額 | 5,800万円 |
◯売却した金額が買換えた金額より大きい場合の計算例
収入 4,700万円×20%=940万円
経費 (2,700万円+150万円)×20%=570万円
課税譲渡所得 940万円−570万円=370万円
譲渡所得税 370万円×20.315%(譲渡所得税率)≒75.17万円
買換え特例を活用しない場合は、以下のようになります。
(4,700万円−2,850万円)×20.315%(譲渡所得税率)≒375.83万円
買換え特例を活用することで、300.16万円減額されています。
◆売却した金額が買換えた金額よりも大きい場合
13年前に購入した不動産を7,800万円(取得費は2,700万円)で売却し、6,700万円の不動産に買い換えた場合の計算になります。
◯前提条件
取得費 | 2,700万円 |
売却額 | 7,800万円 |
所有期間 | 13年 |
譲渡費用 | 150万円 |
買換え資産の購入額 | 6,700万円 |
◯売却した金額が買換えた金額より小さい場合の計算例
収入 7,800万円−6,700万円×80%=2,440万円
経費 (150万円+2,700万円)×(2,440万円÷7,800万円)≒891.54万円
課税譲渡所得 2,440万円−891.54万円=1548.46万円
譲渡所得税=1548.46万円×20.315%(譲渡所得税率)≒314.57万円
買換え特例を活用しない場合は、以下のようになります。
(7,800万円−2,850万円)×20.315%(譲渡所得税率)≒1,005.59万円
買換え特例を活用することで、691.02万円減額されています。
土地や建物のみでも事業用資産の買換え特例を活用できる
事業用資産の買換え特例は、土地のみや建物のみでも活用することができます。
しかし、どのようなときに土地のみや建物のみとなるのでしょうか。3つのケースを紹介します。
300平方メートル以下の敷地しか有さない事業用資産を購入したケース
土地と建物の両方で活用するためには「購入した土地の敷地面積が300㎡以上であること」を満たす必要があります。
そのため、例えばワンルームマンションを購入する場合には、敷地が300㎡以上になることはほぼないため、建物のみが、特例の対象となります。
例外として、同じマンション内で複数の部屋を購入して土地の持ち分が300㎡を超える場合には、土地と建物、どちらも特例の対象になります。
農地を賃貸マンションなどの事業用資産に買い換えたケース
農地を売却して、賃貸マンションやワンルームマンションに買い換えた場合でも事業用資産の買換え特例を活用することができます。
ただし、農業をやめてから土地を売却したケースや無償で農地を貸しているケースは特例適用にならないので注意が必要です。農地で特例を活用するためには、事業として農業をしていると認められる必要があります。
駐車場を売却して賃貸マンションなどの事業用資産に買換えるケース
事業用資産の買換え特例は、駐車場を売却して賃貸マンションなどに買換えるケースでも活用することができます。
原則として、青空駐車場のように、屋根がない状態で活用されている駐車場でも問題ありません。ただし、事業用ではなく個人用の駐車場で使用している場合や、アスファルト舗装していない土地の場合は、事業用ではないと見なされる可能性が高いです。
事業用資産の買換え特例の注意点やデメリット
事業用資産の買換え特例には、注意点やデメリットもあります。
特例を活用した直後に相続した場合
買換え特例制度を活用した直後に相続した場合は、相続税が増えてしまう可能性があります。特例制度を活用することで納税額が減り、資産が増える可能性があるためです。
さらに、相続した人は繰り延べた税金を負担する必要があるため、大きな出費を強いられます。
そのため、高齢な場合や持病がある状態で買換え制度を活用する場合には、相続のことも考えることが重要です。
非課税にはならない
事業用資産の買換え特例は、税金の支払いが繰り延べされる制度です。つまり、非課税になるわけではないことを理解しておく必要があります。一時的に税金が少なかったからといって、多くの資金を使ってしまい税金が支払えない事態にならないように注意しましょう。
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